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白亜紀の恐竜やワニの生物地理 系統関係から生物地理を探る新手法の開発

掲載日:2019年6月4日

東京大学総合研究博物館遠藤研究室の久保泰学振特別研究員は、動物の類縁関係から、動物地理を解析する新しい手法を開発しました。この手法を白亜紀のワニや(非鳥類型)恐竜等の陸棲四肢動物に適用した結果、ワニの分布は南半球と北半球に二分される事、恐竜の分布は、(アジア、北米、オーストラリア)、(ヨーロッパ、アフリカ)、(南米、インド、マダガスカル)に三分される事が明らかになりました。さらに恐竜を白亜紀前期と白亜紀後期に分けて解析すると、白亜紀前期は、(アジア、北米、オーストラリア)と(ヨーロッパ、アフリカ、南米、インド)に、そして白亜紀後期は(アジア、北米、ヨーロッパ)と(南米、インド、マダガスカル)にそれぞれ二分され、白亜紀後期は白亜紀前期よりも各大陸での恐竜の固有度が上がった事がわかりました。

恐竜等の化石種では一つの種が一つの標本のみから知られている事が多く、異なる地域間の動物の交流を調べるのが難しいという問題がありました。今回の研究では最も近縁な種(姉妹種)が異なる地域に生息していれば、その二つの地域間に交流があったと考える事で、この問題を解決しました。

恐竜が生息していた中生代には、全大陸からなる超大陸パンゲアが、北半球の大陸からなるローラシアと南半球の大陸からなるゴンドワナに分かれ、さらに各大陸に分かれていきました。本研究でもローラシアとゴンドワナの分割を反映する結果が得られ、またヨーロッパとアフリカが南北の恐竜相の橋渡しをしていたことがわかりました。解析でオーストラリアの恐竜が北半球の大陸と一緒にされたのは、解析に含まれたオーストラリアの恐竜の種数が少なく、かつ原始的な種が多かったためだと考えられます。今後は解析手法をさらに洗練させ、様々な化石種に適用する事で、絶滅種の動物地理やその時代変化についての理解を深めて行きたいと考えています。

「恐竜時代に大陸間で動物の交流がどれぐらいあったのか調べたかったのが研究のきっかけです。自分の思うような解析方法がなかったので自分で作ろうと考えました」と久保特別研究員は話します。「四苦八苦しながら系統図から生物地理のネットワークを算出するプログラムを書きました。プログラミングは初めてなので実現できなかったことも多いです。例えば、この研究では再節約法という時代遅れな方法を使っています。今後も勉強して最先端の手法を取り入れたいです。でもパソコンを見ている研究には少々疲れたので、次は博物館で化石に直に触れる研究や発掘をしてリフレッシュしたいです」。

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白亜紀前期の恐竜の生物地理
白亜紀前期(1億4500万年~1億年前)には、非鳥類型の恐竜はおそらくアフリカとヨーロッパ間を移動したと考えられる。論文中の図を元に作成。
 
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白亜紀後期の恐竜の生物地理
白亜紀後期(1億年~6600万年前)までには、非鳥類型の恐竜は北半球と南半球のグループに分かれた。論文中の図を元に作成。


 

論文情報

Tai Kubo, "Biogeographical network analysis of Cretaceous terrestrial tetrapods: a phylogeny-based approach," Systematic Biology: 2019年4月23日, doi:https://doi.org/10.1093/sysbio/syz024.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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