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新規多段階反応型酸化触媒の開発 創薬に向けた合理的な生合成リデザインの一歩

掲載日:2018年10月19日

結晶構造解析に基づいた酵素改変による新規多段階反応型酸化触媒の創出結晶構造解析に基づいた酵素改変による新規多段階反応型酸化触媒の創出
結晶構造解析に基づいた酵素改変によって新規有用酸化触媒を創出することができます
© 2018 Ikuro Abe.

東京大学薬学系研究科の阿部郁朗教授と中嶋優大学院生らの研究グループは、天然物の複雑骨格形成を触媒する酸化酵素に着目し、その結晶構造解析に基づく酵素改変実験を行うことで、多段階反応を触媒する新規酸化酵素の創出に成功しました。活性物質を合成する新規生体触媒の創出によって、酵素工学の手法を用いた創薬研究へと応用されることが期待されます。

α-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ酵素ファミリーは、糸状菌メロテルペノイドの複雑骨格の形成に関わる鍵酵素です。その中には、多段階の酸化ステップを触媒するものがいくつも存在し、その反応メカニズムに興味が持たれていました。興味深いことに、同酵素ファミリーのAusE、 PrhA両酵素は、78%の高い相同性を持ち、preasutinoid A1を共通の基質として受け入れるものの、異なる多段階酸化反応を触媒し、それぞれ異なる骨格の生成物を与えることが知られており、両者の比較によって、この酵素ファミリーの触媒能の理解につながる重要な知見が得られることが期待されました。

これら酵素の反応性の差異を生むアミノ酸残基を明らかにすべく、両酵素のX線結晶構造解析が行われました。その結果、両酵素共に2.1Åの分解能で構造決定が行われました。その基質結合部位周辺のアミノ酸残基の比較を行った結果、二酵素間で異なる3つの残基が見出されました。これらを入れ替えた変異体を作成し、in vitroにて詳細にその反応を解析した所、AusE、PrhA両酵素触媒能の相互変換に成功したことが判明しました。それに加えて、PrhA変異体は野生型反応から、さらに2-3回酸化反応が進んだ新規酸化型メロテルペノイド化合物を与えることが明らかになりました。

「私たちは今回、X線結晶構造解析に基づいて見出したアミノ酸残基に変異を加えることで、新規な多段階反応型酸化触媒の創出に成功しました」と阿部教授は話します。「活性物質を合成する新規生体触媒を用いた物質生産法を開発することで、薬学研究に貢献できれば」と期待を寄せます。本研究は、新学術領域「生合成リデザイン」、JST/NSFC日本-中国戦略的国際共同研究プログラム「植物共生菌相互作用の包括的利用による二次代謝産物の網羅的解析」研究活動の一環として行われました。

論文情報

Yu Nakashima, Takahiro Mori, Hitomi Nakamura, Takayoshi Awakawa, Shotaro Hoshino, Miki Senda, Toshiya Senda, and Ikuro Abe, "Structure function and engineering of multifunctional non-heme iron dependent oxygenases in fungal meroterpenoid biosynthesis," Nature Communications: 2018年1月9日, doi:10.1038/s41467-017-02371-w.
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