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抗不整脈活性を有するタラチサミンの全合成に成功 強力な生物活性を有する複雑な天然物の完全化学合成

掲載日:2019年11月25日

タラチサミンの全合成
単純な2つの部分構造を連結する合成戦略により、標的分子の短工程での全合成を達成した。
© 2019 Daiki Kamakura, Hidenori Todoroki, Daisuke Urabe, Koich Hagiwara, Masayuki Inoue
 

東京大学大学院薬学系研究科天然物合成化学教室の鎌倉大貴博士研究員、轟木秀憲博士、占部大介講師(現富山県立大学工学部教授)、萩原浩一特任助教、井上将行教授は、抗不整脈活性を有する複雑天然物タラチサミンの全合成を、骨格転位反応を鍵反応とする収束的な合成戦略により達成しました。本研究成果は、2019年11月1日付で、化学分野の総合学術雑誌であるAngewandte Chemie International Edition電子版に掲載されました。

タラチサミンは、キンポウゲ科の植物より単離・構造決定されたジテルペンアルカロイドです。本天然物は電位依存性カリウムチャネルを阻害し、抗不整脈活性を示すことが知られています。本天然物の類縁体は、抗炎症作用や解熱鎮痛作用など様々な生物活性を示すことが知られており、有用な天然物群として注目を集めています。タラチサミンの構造的特徴として6/7/5/6/6/5員環が高度に縮環した6環性炭素骨格上に、3つの四置換炭素および12個の連続不斉中心を含む多数の酸素官能基を有している点が挙げられます。今回、本研究グループは、高酸化度な2つのフラグメントを収束的に連結した後、6/6縮環構造の7/5縮環構造への骨格転位反応を用いることで複雑な炭素骨格を効率的に構築し、タラチサミンの全合成を33工程で達成しました。

上記の合成戦略をより高酸化度のフラグメントに適用することで、酸化度が異なり、様々な生物活性を有するジテルペンアルカロイドの創出が期待されます。

「タラチサミンのような窒素官能基と多数の酸素官能基を持ち、複雑な炭素骨格を持つ天然物を、単純な構造の原料から、有機合成的に効率よく組み上げていくことは、非常に困難です」と井上教授は話します。「今回の全合成では、単純な2つの部分構造を連結する合成戦略により、標的天然物の短工程での合成を達成しました。高酸化度天然物やその誘導体は、有用な生物活性を持つものが多く、これらを医薬や生物機能制御物質として応用するためには、有機合成化学的な手法を用いた自在な供給の実現が必須です。今後も、多様かつ複雑な構造を持つ天然物群の効率的な全合成に挑戦し続けていきたいと思います」と続けます。

論文情報

Daiki Kamakura, Hidenori Todoroki, Daisuke Urabe, Koich Hagiwara, Masayuki Inoue, "Total Synthesis of Talatisamine," Angewandte Chemie International Edition: 2019年11月1日, doi:10.1002/anie.201912737.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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