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全身をめぐる血管系の臓器特異性を全ゲノムレベルで解析 エピゲノムによって制御される血管機能ダイバーシティー

掲載日:2020年1月28日

多様な発現パターンを示す血管系
全身をめぐる血管系の模式図と、9部位の血管でのホメオボックス遺伝子の発現量を色の明るさで示したもの。部位ごとに発現量が大きく異なっていることがわかる。
© 2020 中戸 隆一郎
 

東京大学定量生命科学研究所の中戸隆一郎講師、白髭克彦教授らの研究グループは、臓器ごとに異なる血管内皮の表現型の謎を明らかにするため、大規模なヒト血管内皮エピゲノムデータベースを構築し、血管系の多様性の鍵となる遺伝子群と、それらを制御するゲノム領域を初めて明らかにしました。

全身をくまなくめぐる血管系は連続性を持ちつつも、酸素濃度、変性脂質、炎症刺激などの異なる環境に適応するため、部位ごとに様々な異なる性質を持っています。この血管内皮の性質に異常が起きることが動脈硬化などの疾患の原因となることがわかってきていますが、その詳細なメカニズムはこれまで不明でした。

今回研究チームは国際ヒトエピゲノムコンソーシアムプロジェクトの一環として、国内外の多数の研究者との連携のもと、心臓・肺など9つの部位の血管内皮細胞を対象にエピゲノムデータ・遺伝子発現データを収集し、5テラバイトを超える大規模なエピゲノムデータベースを構築しました。このデータベースを元に網羅的な大規模ゲノム解析を行い、血管内皮細胞だけに存在する重要なゲノム機能部位(エンハンサーなど)を多数同定しました。さらなる解析により、血管内皮の性質は上半身と下半身で大きく分かれること、その多様性には特に遺伝子の転写制御に働くホメオボックス遺伝子群が強く寄与していること、これらの遺伝子群の発現制御にはゲノムの立体構造の変化が関わっていることなどが明らかになりました。本成果は、心疾患などを含む血管系疾患の研究を加速させる画期的な研究成果であり、大規模エピゲノムデータからのデータ駆動型知見獲得に成功した重要な例となります。

なお、本研究は東京大学アイソトープ総合センターの和田洋一郎教授、東京工業大学の木村宏教授、東京大学先端科学技術研究センターの油谷浩幸教授、産業技術総合研究所の光山統泰研究チーム長らの研究チームと共同で行なわれたものです。

「大規模なヒトエピゲノムデータベース構築とその解析においては、高クオリティではないサンプルが一定数含まれてしまうことは避けがたい問題でした。様々な品質評価手法やデータ正規化手法などを開発してきた本プロジェクトは、クオリティが必ずしも完璧ではないデータセットからいかに信頼性のある結果を得るかという課題に対して一つの答えを与えるものになると思います」と中戸講師は話します。

論文情報

Ryuichiro Nakato, Youichiro Wada, Toutai Mitsuyama, Hiroyuki Aburatani, Hiroshi Kimura, Katsuhiko Shirahige, et al., "Comprehensive epigenome characterization reveals diverse transcriptional regulation across human vascular endothelial cells," Epigenetics & Chromatin: 2019年12月19日, doi:10.1186/s13072-019-0319-0.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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