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2本鎖mRNAを設計し、mRNAワクチンの効果を飛躍的に向上 mRNA分子に免疫賦活化アジュバント機能を一体化

掲載日:2018年12月17日

免疫活性化機能一体化mRNAの設計
免疫活性化機能一体化mRNAの設計
様々な2本鎖mRNA設計を検討した結果、mRNAのポリアデニン配列の部分に対して、その相補鎖であるポリウラシルを結合させることで、mRNAからの抗原タンパク質の翻訳活性を保ったまま、強い免疫活性化作用が得られました。本システムは図に示したような様々な利点を持ちます。
© 2016 内田 智士

東京大学大学院工学系研究科の内田智士特任助教らの研究グループは、mRNAワクチンの効果を飛躍的に向上する技術を開発しました。 mRNAワクチンは、感染症の予防ワクチンや、がんの治療ワクチンとして期待されており、すでに第III相臨床試験に進んでいる例もあります。ワクチンには免疫賦活化のためのアジュバントが必要ですが、これまで、従来の病原体由来ワクチンに対して開発されたアジュバントがmRNAワクチンにも転用されていました。しかし、mRNAワクチンの特性を踏まえたワクチン開発が必要です。とりわけ、mRNAは体内での酵素分解を防ぐために、しばしばナノ粒子等送達キャリア用いて投与されますが、アジュバントにはmRNAと同時にキャリアに搭載できることが求められます。

これに対して、mRNAに免疫賦活化作用が強い2本鎖RNA構造を組み込むことで、アジュバント機能を一体化させたmRNAワクチンを開発しました。これは、原理上全てのキャリアに搭載できます。その設計に関して、mRNAのポリアデニン配列の部分に対して、その相補鎖であるポリウラシルを結合させることで、mRNAからの抗原タンパク質の翻訳活性を維持したまま、強い免疫活性化作用が得られることを発見しました。実際に、この技術を用いたところ、マウスにおいてmRNAワクチンの効果が飛躍的に向上しました。さらにヒト由来の免疫細胞に対しても、強い免疫賦活化作用が得られたことから、将来の臨床応用にも有望です。

mRNAワクチンは様々な経路で様々な送達キャリアを用いて投与されますが、今回の技術は、そのほとんどの場面に応用できます。今後、mRNAワクチンを用いた新興(再興)感染症の予防やがんの個別化免疫治療といった分野に大きく貢献できることが期待されます。

「単純な設計で優れた効果が得られて驚きました」と内田特任助教は話します。「今後、本システムの臨床応用に向け、尽力したいと思います」と続けます。

論文情報

Satoshi Uchida, Naoto Yoshinaga, Kayoko Yanagihara, Eiji Yuba, Kazunori Kataoka, Keiji Itaka, "Designing immunostimulatory double stranded messenger RNA with maintained translational activity through hybridization with poly A sequences for effective vaccination ," Biomaterials: 2017年10月11日, doi:10.1016/j.biomaterials.2017.09.033 .
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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