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水/高圧氷の界面に”新しい水″を発見! 水の奇妙な物性の謎に迫る画期的な成果

掲載日:2020年8月19日

東京大学大学院総合文化研究科先進科学研究機構の羽馬哲也准教授、東北大学金属材料研究所の新家寛正助教、宇田聡教授と北海道大学低温科学研究所の木村勇気准教授、産業技術総合研究所環境創生研究部門の灘浩樹主任研究員を中心とする研究グループは、室温−20°Cに保たれた低温室内で水に高圧(248MPa)を加えることで結晶化する氷III(氷の多形の一種。私たちが普段目にする氷は氷Ih)を観察し、成長・融解する氷と水の界面に通常の水とは異なる新しい水の層が形成されることを見出しました。

水や氷は私たちの生活する地球に普遍的に存在する物質であり、とくに氷表面の性質は身近な自然現象に深く関わっています。例えば、水が凍る0°C(凝固点)以下の温度でも氷表面はわずかに融けて液体層を形成します。雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりできるのは、この表面の液体層のおかげです。これまで「水蒸気/氷界面」については多くの研究が行われてきましたが、「水と氷の界面」に関する研究はその重要性にも関わらず、ほとんど進んでいませんでした。

そこで本研究グループは、−20°Cの水を加圧・減圧することで誘起される氷IIIの成長・融解の過程を顕微鏡で観察しました。その結果、加圧により成長する氷IIIと水の界面には周囲の水とは異なる流動性を持つ液体の膜が形成し、減圧により融解する氷の界面にも周囲の水とは異なる微小な液滴が形成することが分かりました。これは、水/氷III界面にこれまで知られていなかった「新しい水」が存在する可能性を示しており、またこの「新しい水」は通常の水よりも高密度で、お互いに混ざり合わないこともわかりました。

私たちの知る水とは異なる構造を持つ水の存在は、水の特異物性を説明するために古くから議論されてきましたが、その決定的な証拠となる“水が互いに異なる構造の二種類の水に分かれる様子”の直接観察は成されていませんでした。本研究では水/高圧氷界面で、通常の水と構造の異なる新しい水とに分かれている様子を直接観察することに成功し、“構造の異なる水”の実験的研究に新たな道を示しました。

「“新しい水”は、別の目的で氷IIIを古典的な手法を用いて観察していたところ、偶然見つけることができました。研究されつくされたと思われる物質の手法・条件の“盲点”をつくことができた結果だと思います。水の物性異常を説明する上で、異なる構造の水の存在が鍵を握っていることは昔から指摘されていましたが、“異なる水”が現れる条件は実験的に到達不可能な深い過冷却条件であることが通説であり、このことが実験的研究に閉塞感を生みました。今回の“新しい水”の発見が、この閉塞した状況を打破する足掛かりになることを期待します」と新家助教は話します。

「新家先生から実験結果を初めて聞いた時はにわかに信じられませんでした。シンプルな手法で水と氷の本質のひとつをつかんだ素晴らしい実験であり、今後この成果を皮切りに多くの研究が進むでしょう」と羽馬准教授は続けます。

水/氷III界面に現れた“新しい水”の層の偏光顕微鏡顕微鏡その場観察
A: 加圧・減圧により水中で成長・融解する氷III結晶。B: 氷III表面の拡大像。画像a,b,dは図A中の四角a,b,及び記号d近傍の拡大像。C: 観察された新しい液体の形状の模式図。図中の青及び赤の四角で示された模式図はそれぞれ、図B中青及び赤の四角で示された観察像の液体形状に対応している。D: 氷IIIの表面の“新しい水”の形態発展。 E: 水/氷III界面の拡大像。画像a,bは図A中の四角a,bに対応している。Fに示すように、均質な液膜から両連続的な(互いに混ざり合わない)パターンへと形態発展する様子が捉えられた。 F: 新しい水の形態の模式図。左右の図は、図B中の画像aとbに対応している。
© 2020 新家寛正

論文情報

H. Niinomi, T. Yamazaki, H. Nada, T. Hama, A. Kouchi, J. T. Okada, J. Nozawa, S. Uda, and Y. Kimura , "High-Density Liquid Water at a Water–Ice Interface ," The Journal of Physical Chemistry Letters : 2020年7月24日, doi:10.1021/acs.jpclett.0c01907.
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