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南鳥島沖に眠る世界需要の数百年分のレアアース資源 海底下の資源分布の可視化と粒径選鉱による経済性の向上に成功

掲載日:2018年12月21日

南鳥島海底レアアース分布図
南鳥島EEZ南部の有望海域における海底面下の深度別レアアース濃度分布図
海底面から1 mごとの深海堆積物中の総レアアース濃度平均値の空間分布を示しています。濃い赤色ほどレアアース濃度が高く、資源として有望であることを意味します。赤枠で表示した「B1エリア」(約105 km2) は特にレアアース資源量が大きいエリアです。
© 2018 加藤 泰浩

東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らの研究グループは、日本最東端の南鳥島周辺の排他的経済水域 (EEZ) に存在するレアアース泥の資源分布を可視化し、世界需要の数百年分に相当する莫大なレアアース資源が存在することを明らかにしました。さらに、粒径分離によってレアアース濃集鉱物を選択的に回収する技術を確立し、資源開発の経済性を大きく向上させることに成功しました。

レアアースは「産業のビタミン」とも呼ばれ、再生可能エネルギー技術やエレクトロニクス、医療技術分野など、日本が誇る最先端産業に必須の金属元素です。その一方で、レアアースの世界生産は中国の寡占状態にあり、不安定な価格や供給構造の脆弱性といった潜在的なリスクが問題となっています。こうした背景の中、2012年に日本の排他的経済水域 (EEZ) 内でレアアースを豊富に含む深海堆積物「レアアース泥」が発見され、将来の開発に向けた期待が高まっています。

今回、加藤教授らの研究チームは、南鳥島EEZ南部海域におけるレアアース泥の3次元的な資源分布をArcGISソフトウェアを用いて可視化することに成功し、約2500 km2の海底に世界需要の数百年分に相当する1600万トン以上 (レアアース酸化物換算) という莫大な量のレアアース資源が眠っていることを明らかにしました。さらに本研究チームは、レアアースの大半が含まれる魚類の歯や骨片などのリン酸カルシウム粒子が、レアアース泥中の他の構成鉱物に比べて大きな粒径を持つことに着目し、粒径分離によってレアアース泥中の総レアアース濃度を最大で2.6倍にまで高めることに成功しました。

南鳥島EEZに莫大な量のレアアース泥が確認されたことと、粒径選鉱によってレアアース泥開発の経済性が大幅に向上可能となったことは、日本の資源戦略に対して極めて大きなインパクトを与えます。将来的に、本研究成果をもとに南鳥島レアアース泥の開発が実現すれば、日本のみならず世界においても海底鉱物資源の開発が進展するとともに、レアアースを活用した多様な最先端産業の発展・創出といった波及効果が期待されます。

「今回の研究成果により、これまで基礎研究の域にとどまっていた海底鉱物資源が、いよいよ現実的な開発を見据えた議論の対象になってきました」と加藤教授は話します。「持続可能な社会の発展に不可欠なレアアースの安定的な供給を確保するために、国や企業、大学・研究機関などが一丸となって、レアアース泥の開発に向けた取り組みをさらに加速していくことが重要と考えています」と続けます。

論文情報

Yutaro Takaya, Kazutaka Yasukawa, Takehiro Kawasaki, Koichiro Fujinaga, Junichiro Ohta, Yoichi Usui, Kentaro Nakamura, Jun-Ichi Kimura, Qing Chang, Morihisa Hamada, Gjergj Dodbiba, Tatsuo Nozaki, Koichi Iijima, Tomohiro Morisawa, Takuma Kuwahara, Yasuyuki Ishida, Takao Ichimura, Masaki Kitazume, Toyohisa Fujita, Yasuhiro Kato, "The tremendous potential of deep-sea mud as a source of rare-earth elements," Scientific Reports Volume 8 Article number 5763: 2018年4月10日, doi:10.1038/s41598-018-23948-5.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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