小惑星リュウグウ上に見つかった衝突天体の破片 小惑星リュウグウとベヌーは異なる母天体に由来する可能性
東京大学大学院理学系研究科の巽瑛理客員共同研究員、諸田智克准教授、杉田精司教授らは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、名古屋大学、千葉工業大学、高知大学、立教大学の研究グループとともに、暗いリュウグウ表面に非常に明るい岩塊を多数個発見し、光学航法カメラONCと近赤外分光計NIRS3の観測により、この明るい岩塊のうち6つは外来起源物質である可能性が高いことを突き止めました。
これらの岩塊はリュウグウの母天体とS型小惑星との衝突によりもたらされたものである可能性が高いと考えられます。ベヌーではV型小惑星に近い外来起源物質が発見されており、両者を比較すると両者が違う衝突史を経てきたことがわかります。また、リュウグウで見つかった明るい岩石のうち多くはリュウグウと似た反射スペクトルを持つこともわかりました。これらはリュウグウ母天体内部の異なる場所からきたものであると考えられます。
今年12月にははやぶさ2が地球に帰還し、リュウグウのサンプルが地球へ運ばれてきます。はやぶさ2の回収試料の中にはこれらの明るい岩塊片が混ざっている可能性があり、それらを調べることでリュウグウ母天体の熱進化や衝突天体について、より詳細な情報を得られることが期待できます。
「日米は、それぞれ最先端の探査機を飛ばして炭素に富む小惑星(リュウグウとベヌー)を同時並行的に探査しています」と杉田教授は話します。「この2つの小惑星は大きさ、形、反射率(おそらく炭素量を反映)とも酷似していますが、含水鉱物の量だけは大きく異なることが分かってきました。なぜ水の量のみが大きく異なるのか、世界の科学者が悩んでいます」と続けます。
「この謎への大きなヒントが、今回の同時論文発表で明らかにされた母天体の違いです。リュウグウとベヌーは異なる母天体からやってきた可能性が高いことが、衝突天体の破片のスペクトル型の違いから分かったのです。このような発見が同時になされるのも同時並行探査の醍醐味です。両小惑星のサンプル分析がなされたら、両小惑星の母天体の具体的な進化の描像も明らかになるでしょう」
論文情報
E. Tatsumi, C. Sugimoto, L. Riu, S. Sugita, T. Nakamura, T. Hiroi, T. Morota et al. , "Collisional history of Ryugu’s parent body from bright surface boulders," Nature Astronomy: 2020年9月22日, doi:10.1038/s41550-020-1179-z.
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