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教養科目の超短期国際研修授業のインパクトを包括的に整理 言語文化資質のみならず自己成長と専門知識の涵養に有効

掲載日:2019年2月27日

マレーシアで実施した国際研修授業に参加した学生と現地の学生の集合写真
© 2019 国際交流センターグローバリゼーションオフィス

東京大学大学院総合文化研究科の櫻井勇介特任講師は、2-4週間程度で国内外で実施される超短期国際研修授業がもたらす学生へのインパクトを包括的に調査しました。その結果、特に注目されがちな言語運用スキルと異文化間感受性はもちろんのこと、学生の自己理解や学業への動機付け、将来設計などを含む自己成長の涵養に加え、学問内容の理解についても教室内では得られないインパクトをもたらしうることを具体例とともに明らかにしました。 超短期国際研修授業はこれまでツアー(旅行)として見なされることも多く、大学の授業としての意義が学生からも教員からも正当に理解されないという扱いを受けることがありました。また、国外で実施されるプログラムは、もっぱら学生の外国語運用力や異文化理解に資するためのものだという理解も根強く残っています。

今回の研究では、超短期国際研修授業を履修した学生のうち20名から聞き取り調査を行い、授業がもたらす履修生へのインパクトを模索し整理しました。彼らの語りから関連する発言を抽出し、整理することで、1)「自己成長」、2)「汎用スキル」、3)「国際的な視野」、4)「専門分野の知識」の4つの主要素に学生へのインパクトをまとめるに至りました。この中で全ての学生が頻繁に言及していたのは「自己成長」であり、一方で、「専門分野の知識」については比較的に頻度は少なかったものの3/4の学生が言及していました。

実は超短期の国際研修授業は全く新しい教育手法というわけではありません。しかし、教育の国際化がますます進む大学において、学生のグローバルな資質の向上に資する重要な教育手法であるにもかかわらず、その効果の検証や効果的な実施方法のための研究は不十分です。本調査は櫻井特任講師の3年間のプロジェクトの基盤となる成果であり、「こういった国際研修授業の学生への長期的なインパクトを明らかにすることが、本プロジェクトのゴールです」と語ります。

オーストラリアで実施した国際研修授業を通じて交流を深める学生
© 2019 国際交流センターグローバリゼーションオフィス
フィンランドで実施した国際研修授業では革新的な教育手法を体験
© 2019 国際交流センターグローバリゼーションオフィス
ハンガリーで実施した国際研修授業に参加した学生と現地の学生の集合写真
© 2019 国際交流センターグローバリゼーションオフィス

年間2から3つの国際研修授業で学生を引率する櫻井特任講師にとって、それまでに国際的な場面での学業経験が少ない学生を指導することは、学問的な理解を深めるのはもちろんのこと、そこにある苦労と楽しみの両側面を伝えることに他なりません。「私自身、修士課程から海外の大学で学び、散々恥ずかしい思いやもどかしい経験、他の人から理解されない経験をしてきました」と櫻井特任講師は振り返ります。「多くの学生にとって超短期国際研修授業はそのような経験をするために参加するようなものだと思っています。しかし、そのような経験をしながらも多くの学生が前向きに次のステップを踏み出そうとしています」。

超短期の国際研修で得られる数々の望ましいインパクトが確認できたとはいえ、4年間の学部教育を考えた時にこの短期の経験がどれほど有意義なのか、高等教育機関の教育的理念にどれほど貢献するものなのかはまだ不明瞭です。今回の研究成果がまとまったことで、得られるインパクトが学生にとって長期的にどのような意味を持つのか探索していく素地ができたと言えるでしょう。

論文情報

Yusuke Sakurai, "Students’ perceptions of the impacts of short-term international courses," Journal of Research in Innovative Teaching & Learning: 2018年12月1日, doi:10.1108/JRIT-10-2017-0026.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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