ARTICLES

印刷

裏しかない葉が平たくなるための座標が判明 オーキシンを手がかりに葉を平たくする

掲載日:2021年3月25日

オーキシンによる平たい面の位置決め
葉の原基の横断面を模式的に示す。左上、最初は葉の原基の断面は、裏表の境目がないため平たくなれず丸い。そこに赤丸で示す位置にオーキシンが強くはたらき、その位置をもとにDLという遺伝子が黒矢印の領域で発現を始め、その効果で葉の横断面は楕円形に変形、そのまま平らな形になっていく。左下、やがて葉の原基の断面で一番太いところにも新たに対になる形でオーキシンの強くはたらく場所が生まれる。右下、最初の二箇所のオーキシンの座標では、PRSbという遺伝子も発現し始める。これも葉が平たくなることを助ける。
©2021 糠塚明

東京大学大学院理学系研究科の糠塚明研究員(当時)、山口貴大研究員(当時)、塚谷裕一教授の研究チームは今回、葉が平たくなるときのその位置決めについて、新しい仕組みを発見しました。葉が平たくなるためには一般に、裏と表の位置が決まることが必要とされています。すなわち、裏と表の境目が決まると、そこに沿って平たくするというのが、桜、チューリップ、パンジーなど多くの植物が平たい葉を持つ基本的な仕組みです。ところが世の中には、アヤメのように裏しかない(単面葉といいます)のに平たい葉もあります。裏しかないと、裏と表の境目というのもありません。どうやって平たい面の位置を決められるのかがこれまで謎でした。

今回の糠塚博士らの研究から、単面葉では植物ホルモンの一つオーキシンが特定の場所で強くはたらくことで、それが位置決めの座標になっていることが示されました。裏と表の境目がない状態でも、植物はオーキシンの流れを使うことで葉を平たくすることができるということは、葉の形作りの仕組みが、従来理解されていたよりも柔軟でかつ多くの可能性を持つということになります。今まで理解のできなかった特殊な形の葉の形作りの仕組みの理解、葉の形の進化の解明など、今後の展開に大きく寄与できると期待されます。また花弁は葉の変形した器官ですから、花形のデザインにも応用できるかもしれません。

「ネギの葉は実は裏しかありません。葉は表と裏があって初めて平たくなれるのです。ところがアヤメのように、裏しかないのに平たくなれる植物もいます。以前私たちは、その謎の仕組の鍵は葉を厚くする仕組みだということを発見しました」と塚谷裕一教授は話します。「ところがそこにはまた謎が生まれました。葉の厚さというものも、実は葉の裏と表が決まってこそその向きがはっきりするものです。裏しかないのにどうやって厚さの軸を見つけるのでしょう」と続けます。「その謎を今回私たちは解明しました。植物のホルモンとして大事な働きをたくさん示すことがわかっているオーキシンが、その厚さの軸を教えているようなのです。実は植物では何でもかんでもオーキシンが大きな役目を担っているので、正直またか、という気もしますが、それでも、私たちが過去に解明した謎の、さらに奥にあった謎を自力で明らかにできたのは、幸いです」

論文情報

Akira Nukazuka, Takahiro Yamaguchi, and Hirokazu Tsukaya, "A Role for Auxin in Triggering Lamina Outgrowth of Unifacial Leaves," Plant Physiology: 2021年2月23日, doi:10.1093/plphys/kiab087.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

関連リンク

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる