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超遠方宇宙に大量の巨大ブラックホールを発見 すばる望遠鏡の最新鋭カメラで稀少天体を発見

掲載日:2019年4月26日

今回発見された100個の超遠方クェーサー
各パネルの中央に写っている赤い天体がクェーサー。上7段が新発見された83個、下2段が再発見された17個です。超遠方にあるため、宇宙膨張による赤方偏移と宇宙空間での光の吸収効果で、このように非常に赤く観測されます。画像は全て、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCによる探査観測で得られたものです。
(クレジット:国立天文台)

東京大学の柏川伸成教授率いる研究者チームは、地球から約130億光年離れた超遠方宇宙において、83個もの大量の巨大ブラックホールを発見しました。巨大ブラックホールが超遠方宇宙にも普遍的に存在することを初めて明らかにした重要な成果で、宇宙初期に起こった「宇宙再電離」の原因に対しても新たな知見を与えるものです。

巨大ブラックホールは太陽の100万倍から100億倍にも達する重さを持ち、その誕生過程は謎のままです。また宇宙初期にもやはり普遍的に存在するのか、そしてその個数密度はどれくらいか、といった基本的な事も分かっていませんでした。巨大ブラックホールを見つけるには、それが周囲の物質を飲み込む過程で明るく輝く「クェーサー」を探す方法が効率的です。しかしこれまでの探査では、超遠方宇宙には非常に稀にしかクェーサーが発見されず、しかも見つかるのは現在の宇宙では珍しいような、最重量級の巨大ブラックホールによる最も明るいクェーサーに限られていました。

すばる望遠鏡では現在、最新鋭の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam (HSC)」を用いて、300夜にわたる大規模な探査観測を実施しています。研究チームは、そこに写っている膨大な数の天体の中から、まずは超遠方クェーサーの特徴を示す候補天体を選び出しました。次にすばる望遠鏡、大カナリア望遠鏡、ジェミニ望遠鏡という3つの大口径望遠鏡を用いて、候補天体に対する集中的な追観測を行いました。こうして得られたスペクトルの特徴から、研究チームは83個の超遠方クェーサーを新発見することに成功しました。これらは従来知られていたクェーサーのわずか数パーセント程度の明るさで、今回初めてその微弱な光をとらえ、普通の重さの巨大ブラックホールが超遠方宇宙にも多数存在することを初めて明らかにしました。

今回の研究は、すばる望遠鏡の最新鋭カメラHSCが持つ世界随一の探査観測能力によって、初めて可能になりました。研究チームでは、今回の成果をもとにさらに遠方への探査を進め、巨大ブラックホールが誕生した経緯を明らかにしていきたいと考えています。

「すばるの持つ大口径による集光力、HSCの持つ超広視野、そしてわたしたちの創意工夫と地道な努力が加わって今回の発見はもたらされました」と、柏川教授は話します。

論文情報

Matsuoka, Yoshiki; Strauss, Michael A.; Kashikawa, Nobunari; Onoue, Masafusa; Iwasawa, Kazushi; Tang, Ji-Jia; Lee, Chien-Hsiu; Imanishi, Masatoshi; Nagao, Tohru et al. , "Subaru High-z Exploration of Low-luminosity Quasars (SHELLQs). V. Quasar Luminosity Function and Contribution to Cosmic Reionization at z = 6," The Astrophysical Journal: 2018年12月20日, doi:10.3847/1538-4357/aaee7a.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く, UTokyo Repository別ウィンドウで開く)

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