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五神総長メッセージ  -次期総長予定者の決定を受けて-

掲載日:2020年10月2日

次期総長予定者の決定を受けて

新型コロナウイルス感染症対応のさまざまな制約が残る中ではありますが、キャンパスにおける活動は新学期を迎え、徐々に、元の姿に戻りつつあります。このような中で、このたび東京大学総長選考会議議長より次期総長予定者が決定されたことが発表されました。

今回の総長選考は、大学キャンパスで語り合う機会が減少するなか、しかもオンラインでの教育の準備などに追われる時期に、候補者の所信表明や意向投票が行われるなど、従来とは異なる環境下で進められました。また初めてのリモート環境での投票では、接続トラブルで開始が一時間以上遅延するという想定外の事態がありました。それにもかかわらず、私が総長に選ばれた時よりも高い約8割の投票率となりました。熱意を持ってじっくりと考え、意向投票をしていただいた教員のみなさんと、それぞれの役割に応じ、総長選考のプロセスを支えてくださったすべての人々に対し、深く感謝したいと思います。

しかしながら、国立大学法人化後第三回目となる今回の選考のなかで出された学内外からの質問や疑問、さらには一割を超える白票は、制度の在り方を省みるべき声として重く受け止めています。私が総長に任ぜられた2015年4月に、学校教育法と国立大学法人法の改正法が施行され、学長や教授会の役割を明確にする等の改訂が行われました。今回は、改正法のもとで行われる最初の総長選考でしたが、大切なことは、大学が自らを鍛え上げていくことだと理解しています。これは、東京大学憲章の示す、本学自身が、公正な評価に基づき、自律的に選考を行わなければならないこと、また、総長の責務として、構成員の円滑かつ総合的な合意形成に配慮しなければならないことに他なりません。いま改めて、このことに深く思いをいたしています。まずは教育研究評議会等の場を通じて、部局代表や学内構成員の率直な意見を聴きたいと考えています。同時に経営協議会等の場を通じ、東京大学に対する社会からの期待にもしっかりと耳を傾けたいと思います。それらの意見や期待を結びあわせ、今回の総長選考プロセスの検証とそれを踏まえた未来のあるべき姿について、みなさんとともに考えてまいります。

今日、経済社会は歴史的な変革期にあり、大学に求められる役割にも大きな変化が起き、期待も高まっています。そのなかで拡大するステークホルダーに、私たちは真摯に語りかけ、大学を起点とする価値創造の輪を広げて行かねばなりません。「東京大学ビジョン2020」の中心である多様性と卓越性の相互連環の概念の基本は、やはり構成員や関係者のみなさんの多様な意見の尊重です。私の総長任期も、残り半年となりました。この5年半の間に進めてきた東大改革を結実させ、経営のバトンを受けとる藤井輝夫新総長がよい形でスタートを切ることが出来るような環境をしっかりと整えつつ、残り任期を全力で務めたいと思います。

東京大学総長
五神 真

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