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第4回JIEPPシンポジウムを開催 「大学による日印交流事業の成果と展望」

掲載日:2022年3月29日

<開催報告>

 第4回JIEPPシンポジウム(2022年2月24日開催)では、「大学による日印交流事業の成果と展望」のテーマのもと、基調講演、各大学による成果発表、全体ディスカッションが行われました。平成29年(2017年)採択の大学の世界展開力強化事業(インド)は今年で最終年度となることから、これまでの成果をタイプA・B採択校全体で振り返るとともに、大学が主体となって行う日印交流のあり方について今後の展望を議論しました。

 シンポジウムはオンラインで行われ、大学関係者や企業関係者を中心に105名が視聴しました。総合司会は東京大学経営企画部国際戦略課の八木橋麻美課長が務めました。 林香里東京大学理事・副学長(国際担当)による開会挨拶に続き、ご来賓として駐日インド大使館のMayank Joshi首席公使、文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室の吉岡 路専門官にご挨拶をいただきました。

 基調講演では、インド工科大学ボンベイ校(以下、IITBとする)国際担当DeanのAmit Agrawal教授が、“Japan-India Connect”のタイトルのもと、日本の各大学と同校との豊富な交流経験と今後の展望について話されました。まずIITBは自然豊かな環境のもと、充実した研究・教育により、起業や特許の面でも多大な成果を上げている機関であること、また、インキュベーションにも注力していることが紹介されました。そして、IITBは日本の大学と多くのMoUを有することを述べた上で、北海道大学および広島大学をはじめとする日本の大学との活発な交流事例について説明がありました。また、コロナ禍でも日本から教員が訪問していることが紹介され、今後もさらに研究・学生交流を発展させていく意欲が語られました。

 次に、「大学の世界展開力強化事業(インド・タイプA)」の平成29年度(2017年度)採択校である北海道大学と広島大学が、同事業の5年間の総括となる成果発表を行いました。

 北海道大学の岡崎太一郎教授は、同採択事業として実施している持続可能な輸送システムと社会インフラ構築のための国際共同研究力育成(STSI)プログラムについて説明しました。プログラムはPBLの手法を用いた課題解決型の授業やインターンシップ研修に参加して交流経験を積む内容であり、コロナ禍前からインドの連携大学の教員と協力して遠隔授業を行っていたため、渡航が難航する中でもオンラインで実施することができたといいます。交流人数はコロナ禍前には順調に伸びており、学生からの評価も高かったということでした。2020年度以降はオンライン化したことで交流人数には伸び悩みがあったものの、インド側連携大学の協力もあり、インターンシップを完遂できた学生もいたことが紹介されました。産学連携については、企業とともにコンソーシアムを立ち上げて、企業との連携を通じた日印交流に対する多方面からの支援体制を築いてきたことを発表しました。

 次に広島大学の藤原章正副学長は、同大学の「先端技術を社会実装するイノベーション人材養成のための国際リンケージ型学位プログラム(ILDP)」について報告しました。同プログラムは、学生に実地で経験を積ませることを重視して行ってきたということでした。そしてコロナ禍によって活動がオンライン化したあとは、間口を広げたことで受講者数を大きく減らすことなく交流を続けることができているということです。また、プログラムを実施する中で研究交流のための交流会を開始したところ、教員のみならず学生からも高く評価されたということでした。全体として、ILDPを通じてインドの大学と共同指導・共同研究を行うことができ、産官・地域社会との連携にもつながり、交流会では学問分野を超えた多くの参加者を獲得するという成果があったと説明しました。学部から博士課程までをシームレスにつなぐことで、学位取得可能な留学チャネルにつながると考え、今後もプログラムを発展させていきたいと成果報告をまとめました。

 続いて、「大学の世界展開力強化事業(インド・タイプB」の平成29年度(2017年度)採択校である東京大学から渡邉聡総長特任補佐・大学院工学系研究科教授が「日印交流プラットフォーム構築プログラム(JIEPP)」の事業内容と成果を報告しました。同事業では、情報共有・発信のためのウェブサイトを開設・整備し、また情報共有に加えて新たな交流創出の機会とすることも目的にシンポジウムを行ってきたとのことで、また令和2年度(2020年度)からはよりフォーカスしたテーマについて理解を深める機会としてセミナーを開始したということでした。さらに、令和3年度(2021年度)には「大学の世界展開力強化事業」インド事業の採択校を中心に「日印交流関係機関連絡会」を2度開催し、各大学の日印交流関係活動等についてグッドプラクティスや課題などを詳細に情報共有するとともに補助金事業終了後の日印交流プラットフォームのあり方について意見交換していると述べました。これを踏まえ、令和4年度(2022年度)以降は、同校で受託している「日本留学海外拠点連携推進事業(南西アジア)」と連携しながらプラットフォーム事業を発展させていく予定であることを表明しました。

 全体ディスカッションでは、東京大学大学院人文社会系研究科の加藤隆宏准教授の司会のもと、すべての登壇者が一堂に会し、視聴者からの質問に回答したほか、大学による日印交流の意義やプラットフォーム事業への期待について議論しました。各大学にとってのインドとの交流事業の重要性について、日印の学生の気質の違いにより、むしろ両者が互いに補い合う関係を築くことができることが挙げられました。また、インドの学生に日本のセールスポイントとしてアピールできることとして、研究交流を通じたテーマの先進性のアピールが可能であること、また、日本文化や治安面での安心が引き付けるポイントになりうるとのことでした。他方で、アグラワル教授からは、インドのアピールポイントとして、豊かな文化やインドの学生の活発さがあげられると述べられました。プラットフォームへの期待については、情報共有の重要性が確認されたほか、日本側・インド側双方から複数の大学同士で交流する「多対多」の交流を行うことや、日印の大学でセミナーを共同開催することなどの提案がありました。

 最後に、東京大学の渡邉総長特任補佐・教授が、全体ディスカッションで提起された「多対多」の交流に意欲を示すとともに、多くの日印交流関係者の協力によって今後もプラットフォーム事業の継続・発展させていくと述べ、会を締めくくりました。

<概要>

  •  日 時: 2022年2月24日(木) 10:00-12:00
  •  会 場: Zoomウェビナーによるオンライン開催
  •  テーマ: 「大学による日印交流事業の成果と展望」
  •  内 容: 上記のテーマに関する基調講演/発表/ディスカッション
  •  使用言語: 日本語・英語(同時通訳あり)

<プログラム>

総合司会              八木橋 麻美 東京大学経営企画部国際戦略課 課長
10:00-10:10 
 開会挨拶 林 香里 東京大学理事・副学長
 来賓挨拶 Mayank Joshi インド大使館首席公使
      吉岡 路 文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室 専門官 
10:10-10:30
 基調講演 “Japan-India Connect” Prof. Amit Agrawal PhD, FNAE, FNASc, FASc
 (Dean (International Relations) & Institute Chair Professor, Department of Mechanical Engineering, Indian Institute of Technology Bombay)
10:30-11:00
 大学の世界展開力強化事業(インド・タイプA、H29-R3)採択校による成果発表
  •   北海道大学 岡崎 太一郎 北海道大学大学院工学研究院教授(STSIプログラム事業推進責任者)
  •   広島大学 藤原 章正 広島大学 副学長(学術院担当)、大学院先進理工系科学研究科教授
11:00-11:15
 大学の世界展開力強化事業(インド・タイプB、H29-R3)採択校による成果発表
  •   東京大学 渡邉 聡 東京大学大学院工学系研究科教授、総長特任補佐
11:15-11:45
 全体ディスカッション
  司会 加藤 隆宏 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部 インド哲学仏教学研究室 准教授
11:45-11:55
 総括・閉会挨拶等 渡邉 聡 東京大学大学院工学系研究科教授、総長特任補佐
 
 
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