SDGsシンポジウム2025 を開催 「サステイナビリティ(持続可能性)とウェルビーイングのための不平等への取り組み」

東京大学とシュプリンガーネイチャーは2025年2月8日に「不平等と持続可能な開発目標(SDGs)の接点」に関するシンポジウムを共催しました。今回は東京大学とシュプリンガーネイチャーが共催する6回目のSDGsシンポジウムであり、2019年、2021年、2022年、2023年、2024年の過去5回では、それぞれ異なるSDGsの目標に焦点を当ててきました。2025年の本シンポジウムでは、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に加えて、SDGsの他の目標との接点に焦点を当てました。これは、地球規模で蔓延し、また顕在化しつつある不平等が持続可能性と人間のウェルビーイングに重要な影響を及ぼす、という本シンポジウムの実行委員会の中での共通認識に基づくものです。所得、性別、年齢、人種、民族、障害などは、このようなリスクを生み出す不平等のほんの一例に過ぎず、真に持続可能な未来への移行を確実にするためにはこれらに取り組まなければなりません。個人、社会、地球全体のために、不平等をなくすための包括的な知見とアクションを編み出し、実行に移すことを求める声が高まっています。不平等をなくすための変革的な取組みには、学術コミュニティや広く一般社会における対話を喚起するための超学際的な研究が必要です。
このような認識を反映し、本シンポジウムでは、不平等、持続可能性、ウェルビーイングという横断的なテーマについて豊富な経験を有し国際的に活動する研究者を集めました。登壇者については、専門分野、所属機関、性別に関して、包摂性を達成できるよう特に配慮しました。
開会挨拶は、東京大学未来ビジョン研究センター 福士謙介センター長とシュプリンガーネイチャー・ジャパン アントワーン・ブーケ代表取締役社長によって行われました。両氏は本シンポジウムの基調を定め、不平等、持続可能性、ウェルビーイングが強く関連していること、そして現在の世界情勢と不平等の拡大が私たち自身と将来の世代に壊滅的な事態をもたらしうることを強調しました。
最初の基調講演では、白波瀬佐和子東京大学特任教授・国連大学上級副学長が、ジェンダーと年齢の観点から、世界的な不平等の主な概念とパターンについて概説しました。 さらに同氏は、このような不平等を前にして、SDGsを達成するためには新たな社会契約を結ぶ必要があることを強調しました。続いての基調講演では、マグダレーナ・スキッパーNature編集長、Nature Portfolioチーフ・エディトリアル・アドバイザーが、不平等への取り組みにおける科学と出版の役割を強調しました。同氏は、蔓延し、また顕在化しつつある不平等に取り組むことができる知識を生み出すためには、研究と出版における包括性に焦点を当て、多様性を支持する必要性を指摘しました。
次に4人のパネリストが、不平等、持続可能性、ウェルビーイングの相互作用に関する様々な重要な問題を概説しました。 まず、馬奈木俊介九州大学主幹教授が、現在の不平等を考慮したウェルビーイングと持続可能性に関する研究の隔たりを埋めるために、新国富指標(Inclusive Wealth Index)のような新しいテクノロジーとウェルビーイングの代替尺度がどのように役立つかを議論しました。続いて、石原保志筑波技術大学学長は、日本社会における障害を持つ学生のインクルーシブ性を高めることを目的とした、筑波技術大学の教育理念や取り組みについて紹介しました。山口悦子公益財団法人ジョイセフ事務局長は、グローバル・サウスにおけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を改善するための介入を提供する際に、コミュニティ・ベースのアプローチを通じて地域の不平等を克服するためのジョイセフのアプローチについて概説しました。
不平等が非常に幅広い概念であることを踏まえ、各基調講演とパネルプレゼンテーションのテーマは、異なる学問分野のレンズを通して、不平等、持続可能性、ウェルビーイングの接点に関する様々な観点を反映できるように考慮されました。それにより、この接点において現在の主なパターン、研究上の課題、主な研究優先順位が明確になりました。
最後に、伊藤たかね東京大学多様性包摂共創センター長・特任教授がモデレータを務め、全登壇者によるパネルディスカッションが行われました。このパネルディスカッションでは、不平等とSDGsに様々な形で携わってきた登壇者の経験に基づく議論が展開されました。パネルディスカッションで討議された主なトピックは、(a)不平等の研究のための超学際性はどのように促進できるか、(b)社会の内外の不平等をなくすための包括的な解決策をデザインし、実施するために重要なことは何か、などでした。
シンポジウムは、東京大学 藤井輝夫総長による閉会挨拶で幕を閉じました。藤井総長は、持続可能性とウェルビーイングに不平等がもたらす主な影響、なぜ適切な対応策の開発にあたり学際的アプローチが不可欠であるか、そして東京大学が現在実施している主な関連する取組みについて述べました。
本シンポジウムには世界各国から378名が参加しました。参加者の基本的な内訳を見ると、110人が会場参加し、28か国から268人がオンラインで参加しました。オンライン参加者のうち、約70%が日本から、約30%がその他の国からの参加でした。日本以外で参加者の多かった国としては、インド(15人)、フィリピン(11人)、インドネシア(9人)、パキスタン(6人)、アメリカ合衆国(5人)などが挙げられます。学術・研究機関だけでなく、民間企業、政府機関、市民社会からの参加者も多く、本イベントの超学際的な魅力を示しています。また、実際の参加者数を正確に推定することはできませんが、学生や若手研究者の登録も多く見られました。
シンポジウムに続いて、ポスターセッションが行われ、東京大学及び国内外の他大学の学部学生、大学院学生が登壇者、参加者に自身の研究について発表しました。SDGs研究について様々な角度から捉えたポスターが合計14件提出されました。このうち6件は東京大学から、8件は他大学からの参加でした。ポスターセッションでは、学生がシンポジウムの講演者や参加者からフィードバックや助言を受けていました。

写真:
[上段]左から、福士センター長、アントワーン・ブーケ氏(シュプリンガーネイチャー・ジャパン代表取締役社長)、白波瀬特任教授、スキッパー編集長、藤井総長
[下段]パネルディスカッション(左から、伊藤特任教授、石原学長、山口事務局長、馬奈木主幹教授、スキッパー編集長、白波瀬特任教授)
このような認識を反映し、本シンポジウムでは、不平等、持続可能性、ウェルビーイングという横断的なテーマについて豊富な経験を有し国際的に活動する研究者を集めました。登壇者については、専門分野、所属機関、性別に関して、包摂性を達成できるよう特に配慮しました。
開会挨拶は、東京大学未来ビジョン研究センター 福士謙介センター長とシュプリンガーネイチャー・ジャパン アントワーン・ブーケ代表取締役社長によって行われました。両氏は本シンポジウムの基調を定め、不平等、持続可能性、ウェルビーイングが強く関連していること、そして現在の世界情勢と不平等の拡大が私たち自身と将来の世代に壊滅的な事態をもたらしうることを強調しました。
最初の基調講演では、白波瀬佐和子東京大学特任教授・国連大学上級副学長が、ジェンダーと年齢の観点から、世界的な不平等の主な概念とパターンについて概説しました。 さらに同氏は、このような不平等を前にして、SDGsを達成するためには新たな社会契約を結ぶ必要があることを強調しました。続いての基調講演では、マグダレーナ・スキッパーNature編集長、Nature Portfolioチーフ・エディトリアル・アドバイザーが、不平等への取り組みにおける科学と出版の役割を強調しました。同氏は、蔓延し、また顕在化しつつある不平等に取り組むことができる知識を生み出すためには、研究と出版における包括性に焦点を当て、多様性を支持する必要性を指摘しました。
次に4人のパネリストが、不平等、持続可能性、ウェルビーイングの相互作用に関する様々な重要な問題を概説しました。 まず、馬奈木俊介九州大学主幹教授が、現在の不平等を考慮したウェルビーイングと持続可能性に関する研究の隔たりを埋めるために、新国富指標(Inclusive Wealth Index)のような新しいテクノロジーとウェルビーイングの代替尺度がどのように役立つかを議論しました。続いて、石原保志筑波技術大学学長は、日本社会における障害を持つ学生のインクルーシブ性を高めることを目的とした、筑波技術大学の教育理念や取り組みについて紹介しました。山口悦子公益財団法人ジョイセフ事務局長は、グローバル・サウスにおけるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を改善するための介入を提供する際に、コミュニティ・ベースのアプローチを通じて地域の不平等を克服するためのジョイセフのアプローチについて概説しました。
不平等が非常に幅広い概念であることを踏まえ、各基調講演とパネルプレゼンテーションのテーマは、異なる学問分野のレンズを通して、不平等、持続可能性、ウェルビーイングの接点に関する様々な観点を反映できるように考慮されました。それにより、この接点において現在の主なパターン、研究上の課題、主な研究優先順位が明確になりました。
最後に、伊藤たかね東京大学多様性包摂共創センター長・特任教授がモデレータを務め、全登壇者によるパネルディスカッションが行われました。このパネルディスカッションでは、不平等とSDGsに様々な形で携わってきた登壇者の経験に基づく議論が展開されました。パネルディスカッションで討議された主なトピックは、(a)不平等の研究のための超学際性はどのように促進できるか、(b)社会の内外の不平等をなくすための包括的な解決策をデザインし、実施するために重要なことは何か、などでした。
シンポジウムは、東京大学 藤井輝夫総長による閉会挨拶で幕を閉じました。藤井総長は、持続可能性とウェルビーイングに不平等がもたらす主な影響、なぜ適切な対応策の開発にあたり学際的アプローチが不可欠であるか、そして東京大学が現在実施している主な関連する取組みについて述べました。
本シンポジウムには世界各国から378名が参加しました。参加者の基本的な内訳を見ると、110人が会場参加し、28か国から268人がオンラインで参加しました。オンライン参加者のうち、約70%が日本から、約30%がその他の国からの参加でした。日本以外で参加者の多かった国としては、インド(15人)、フィリピン(11人)、インドネシア(9人)、パキスタン(6人)、アメリカ合衆国(5人)などが挙げられます。学術・研究機関だけでなく、民間企業、政府機関、市民社会からの参加者も多く、本イベントの超学際的な魅力を示しています。また、実際の参加者数を正確に推定することはできませんが、学生や若手研究者の登録も多く見られました。
シンポジウムに続いて、ポスターセッションが行われ、東京大学及び国内外の他大学の学部学生、大学院学生が登壇者、参加者に自身の研究について発表しました。SDGs研究について様々な角度から捉えたポスターが合計14件提出されました。このうち6件は東京大学から、8件は他大学からの参加でした。ポスターセッションでは、学生がシンポジウムの講演者や参加者からフィードバックや助言を受けていました。

写真:
[上段]左から、福士センター長、アントワーン・ブーケ氏(シュプリンガーネイチャー・ジャパン代表取締役社長)、白波瀬特任教授、スキッパー編集長、藤井総長
[下段]パネルディスカッション(左から、伊藤特任教授、石原学長、山口事務局長、馬奈木主幹教授、スキッパー編集長、白波瀬特任教授)