GABで育んだ国際的なネットワーク|総長室だより第29回 思いを伝える生声コラム
東京大学第30代総長 五神 真
GABで育んだ国際的なネットワーク
11月12日と13日の二日に分けてオンラインでUTokyo Global Advisory Board (GAB)Meetingを開催しました。GABは小宮山宏元総長のもと、2006年に始まったプレジデンツ・カウンシル(PC)を発展させたものです。東大の応援団を世界に拡げることを目的としていたPCは私の総長就任後、一回休会を経て、2016年に最終回を開催。翌17年、総長室の正式な組織として規則に定め、グローバルな視点で議論し、助言を頂く年次開催の会合としてGABを開始しました。
第1回では、ジェンダーの話題が議論されました。東大の女子学生比率の低さは、世界の“普通”からみると、不健康だ、放置すべきではないというのです。数値目標の要否の議論は白熱しました。第2回では、2019年にスタートすべく準備を進めていた、東京カレッジの構想について議論頂きました。名前をどうするかで盛り上がり、東京カレッジという名称に至りました。昨年の第3回では、グローバル・コモンズ・センターの設立につながる有意義な助言を沢山頂きました。
今年の第4回は、私の総長任期の終了にあわせ、GABも最終回として開催しました。メンバーの皆さんからは、GABでアドバイスしたことが、東京カレッジ、東京フォーラム、グローバル・コモンズ・センターのように次々に実現していることが素晴らしいと評価して頂きました。オンラインでの開催となり、直接お目にかかれなかったのは残念でしたが、画面にメンバーの顔が映った瞬間、旧知の友人らと会ったような感覚を覚えました。メンバーの皆さんも同じように感じて頂いたようです。回を重ね、真剣な議論を交わしたメンバーとの間の連帯感のようなものを実感しました。GABを通じて、東京大学を支援する国際的なネットワークが構築されたのです。
今年1月にダボス会議に参加するためにスイスに出張した際に、GABメンバーのビル・エモットさんの勧めで、ロンドンに立ち寄りました。エモットさんのアレンジで、英国の教育界の方々との意見交換や、ジャパンソサエティでの講演を行いました。総長として進めてきた東大改革について、海外からどのように見えるのかを知る大変貴重な機会となりました。
分断が加速している今の国際社会において、普遍的な価値を追求するアカデミアの活動は、分断を乗り越え世界を繋ぐ力を生み出すものです。その役割は今後いっそう重要になっていくでしょう。
「学内広報」1541号(2020年12月21日)掲載