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自由な学びを楽しもう |  総長室だより~思いを伝える生声コラム~第10回

掲載日:2018年5月31日

実施日: 2018年05月25日

東京大学第30代総長 五神 真

自由な学びを楽しもう
 

4月12日、今年も日本武道館で入学式を行い、3,132人の学部生と4,415人の大学院生を迎えました。学部と大学院の入学式でお二人の先生からすばらしい祝辞をいただきました。全文はホームページに掲載してありますので、一読されることをお勧めします。

大学院の入学式では東京大学卓越教授、十倉好紀先生が祝辞を述べてくださいました。十倉先生は物性物理学の分野で世界をリードする研究者です。「士別れて三日なれば、即ち刮目して相待つべし」という中国の古典を紹介し、こうおっしゃいました。「日々接する大学院生たちが、わずかな期間にありありと一皮むけたように成長していること(中略)をしばしば目撃します」。学生が研究に没頭している中で突然素晴らしい成長を遂げるというのです。これは私自身も幾度となく経験しています。十倉先生はさらに続けます。そこで満足してはいけない、大切なのはその先だ、その時こそ、大きな夢を描き、さらに高い目標を設定すべきだ、と。東京大学は、学生の皆さんが制約なく伸び続ける場でなければならない、と私は思いました。学生のみなさんにはこのような自由な学びを大いに楽しみ、野心をもって挑戦し続けてほしいと思います。

もう一つ重要なことは、学びの場の多様性です。この点で、ロバート キャンベル国文学研究資料館長の学部入学式での祝辞は、大変示唆に富むものでした。先生はアメリカ育ちでありながら、日本という異境の地で、日本の古典文学を研究し教育してきた方です。人が言語や文化のボーダーを越えて共に学び、働き、愛し合うことの難しさや、他者の痛みを思いやる共感の力の大切さを指摘されました。その一方でエビデンスを示さずに共感を「煽る」だけのフェイクニュースの危うさなどについても語られました。だからこそ論理と共感のきわどいバランスを支える知的なスキルが必要であり、それこそが鍛えるべき「本来の教養」だ、と呼びかけています。私はこれまでいろいろな場面で「自分と異なる他者を理解し、自己を相対化し、多様性を尊重することが大切だ」と述べて来ました。キャンベル先生の祝辞によって、この多様性と教養との奥深いつながりをあらためて感じました。多様性をより深く理解し教養を育む場として、東京大学の環境を充実させていきたいと考えています。

前回も触れた国際総合力認定制度(Go Global Gateway)は、授業や課外活動などを通じて「世界の多様な人々と共に生き、共に働く力」を鍛えてもらうために導入した新しい仕組みです。新入生のみなさんにはぜひ積極的に活用していただきたいと思います。

「学内広報」1510号(2018年5月25日)掲載



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