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イヤな目に遭うことも面白い。 | UTOKYO VOICES 025

掲載日:2018年3月20日

UTOKYO VOICES 025 - イヤな目に遭うことも面白い。

大学院経済学研究科 教授 城山智子

イヤな目に遭うことも面白い。

子どもの頃から本が大好きで、『ドリトル先生』や『くまのパディントン』シリーズなど、知らない世界、行ったことのない場所の冒険譚に心惹かれた。「こういう『知りたい、行ってみたい』という気持ちが、今の研究につながっている」と城山は語る。

東大文学部2年の春休み、母と二人で中国旅行に出かけた。飛行機でたった2~3時間の距離なのに、当時の中国はまったくの異世界で、「中国の『おかしなところ』を知りたい」と思うようになった。

①長い歴史、②共産主義、③発展途上という、「今につながる中国の3つの顔」を統合した研究ができたら面白いと、東洋史学を専攻するも、中国留学を目前に天安門事件が勃発し、急遽、ハーバード大学に行き先を変更。図らずも欧米の視点からアジア・中国史を学ぶと同時に、仮説を立てて検証し議論を行うという未知の手法を徹底的に叩き込まれることになる。

「本当に本当に大変でした」とこぼすが、ここで「研究するための筋肉」を培ったことが、資料の読み方、論文の書き方、議論の仕方に今も役立っている。

城山のユニークさは、基本は歴史学にありながら、アジア経済にフォーカスした比較研究で多くの成果を上げてきた点にある。歴史学はありのままを引き出す「耳を傾ける学問」、経済学は仮説を立てて「分析する学問」、城山の手掛ける経済史は双方に留意する必要があり、そのバランスが難しいという。

現在、城山は「近代アジアにおける水圏と社会経済」という共通テーマを比較検討する大規模なプロジェクトにおいて、研究代表を務めている。

ITの進化によりさまざまなシミュレーションやデータ解析が可能になり、アジアならでは「横のつながり」や「多様性」を包括した比較研究もかなりやりやすくなってきた。アジア特有の時間の流れ、サイクル、経済発展といった「軸」を発見しながら、アジアの今と未来を見通す研究成果を学術的に発信していきたいという。

「今は私がリーダーを務めていますが、これからも多様な研究者たちとのオープンな相互理解を大事にしながら、若い世代につないでいきたいと思っています。いろいろな人材を引き込んで、一国史ではなく地域史のセンターとして、日本の果たす役割を大きくしていきたい」

巨大な官僚国家にして社会主義国である中国には、膨大な資料が保管されている反面、時期や政情によって情報開示や協力体制には波があり、翻弄されることも多い。

「こういう経験が私なりの『中国観』を得るきっかけにもなっていて、イヤな目に遭うことも面白いんですよ」と笑う。

食べたり飲んだり料理をすることが大好きな城山は、中国の雲南省・四川省とチベット、ミャンマー、ネパール、インドをつなぐ茶の交易路として知られる「茶馬古道」巡りなど、リタイア後はお茶と食の旅に出るのが夢らしい。

研究も含めて「好きなことをやるためには死ぬまで健康でいないとダメ」と、運動は大の苦手といいながら、最近はジム通いにもいそしんでいる。

取材・文/加藤由紀子、撮影/今村拓馬

Memento

香港で手に入れた中国の伝統的な茶器「蓋碗」(がいわん)。お茶好きを公言している城山の下にはさまざまな茶が集まってくるらしく、研究室にも馥郁とした茶の香りが漂っていた

Message

Maxim

精一杯やったら、運を天に任せて、その結果を待つ。戦前の中国に駐在した外交官や銀行員を出した家に生まれ、経済学者でもあった母が大事にしていた言葉を、いつの間にか自らも受け継いでいる

プロフィール画像

城山智子(しろやま・ともこ)
東京大学文学部卒業(1988年)。ハーバード大学大学院歴史学部博士課程修了(Ph. D., History, 1999)。北海道大学文学部助教授、一橋大学大学院経済学研究科准教授、同教授を経て、2014年4月より現職。専門は、中国・アジア経済史。主著のChina during the Great Depression: Market, State, and the World Economy, 1929-1937は、中国語、日本語でも出版された。中国と世界経済との関係に関する個人研究と並行して、「近代アジアにおける水圏と社会経済-データベースと空間解析による新しい地域史の探求」というグループ・プロジェクトで、モンスーン気候下での水をめぐる問題の比較研究を行っている。

取材日: 2017年12月13日

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