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超電導で飛行機を飛ばし、宇宙空間を飛ぶ観測機器を動かす。| UTOKYO VOICES 064

掲載日:2019年6月6日

UTOKYO VOICES 064 - 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 教授 大崎博之

大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 教授 大崎博之

超電導で飛行機を飛ばし、宇宙空間を飛ぶ観測機器を動かす。

超電導の乗り物としてすぐに思いつくのはリニアモーターカーだが、今、研究開発の最前線にあるのは超電導の航空機だ。過去に超電導リニアモーターカーの研究にも携わっていた大崎も、現在は旅客機の超電導モーターを研究している。

「ジェット燃料を使う今の飛行機は大量の二酸化炭素を排出してしまいますから、ボーイングなどの大手航空機メーカーは次世代の飛行機として電動飛行機の開発に乗り出しています。とはいえ飛行機のモーターを動かすには莫大なエネルギーが必要です。そこで次世代のモーターとして、電気抵抗がない、つまりロスがない超電導が注目されているのです」

超電導状態を作るにはコイルを絶対零度(およそ-273度)近くまで冷やさなくてはならない。超電導体となる温度は素材によって異なるため、素材選びと冷却のしかたが効率の鍵を握る。

もちろん、巨大な実験用飛行機を建造して超電導体と冷却システムを載せ、飛ぶかどうかを実験するわけにはいかない。大崎は素材と冷却システムの組み合わせを検討してシミュレーションを行い、それをもとにモデルを作って実験を行う。

「シミュレーション結果を受けて実際に手を動かして実験し、それがうまくいったり、うまくいかないところを突き止めてシミュレーションにフィードバックしたり、という段階が、研究が最も深まっていく一番楽しいフェーズですね」

子供の頃から手作りで電子回路を組むのが好きだった。生まれ育った北海道の町には、電子部品の品揃えが充実した店が近くに一軒しかなかったが、その店で買い集めた部品でラジオやブザーなどを作って楽しんでいた。「電子回路でものづくり」の根っこは今も大崎の幹を支えている。

超電導はエネルギー問題と気候変動問題を解決しうる技術。大崎の超電導研究の応用対象は乗り物だけでなく、蓄電デバイス・送電線などの電力エネルギー分野や宇宙観測まで幅広い。

JAXAやカブリ数物連携宇宙研究機構との共同研究で、人工衛星に搭載する観測機器の設計研究も手がけている。
「ビッグバン以前の宇宙を知るヒントとなる、宇宙マイクロ波背景放射を観測する機械を開発する研究です。電力消費量の制限が地球上とは桁違いに厳しいため、エネルギー消費の少ない超電導で動かそうとしているんです。普段は工学系研究者とのやり取りが多いので、理学系の研究者との議論は刺激になりますね」

大崎が所属する新領域創成科は、「学融合」を目指している。先の研究はまさに宇宙科学との融合に見えるが、大崎は、共同研究をしているだけでは学融合とは呼べない、と言う。

「複数の分野が一緒に研究をすることで新たな領域を生み出すことがこの研究科で目指している学融合なんです。まだまだこれからです」

超電導には、基礎研究と応用研究の可能性が限りなく秘められている。大崎の研究は、基礎で新しい学問領域を作るとともに、応用でも社会に新たな景色を見せてくれるに違いない。

小物:ネームプレート

Memento

「この木彫りのプレートは学生が自分で作ってプレゼントしてくれたんです」。柏キャンパスの現代的な建物の中ではとりわけ、手作りの暖かみが際立つ。

直筆コメント:強い意志と柔軟な思考

Maxim

「実験をしてシミュレーションと異なる現象が起きた時に、それまでの知識や経験や考え方に縛られていると、その現象の本当の理由が見つけられない。必要なのは柔軟な思考です。よく学生に言う言葉なのですが」

Profile
大崎博之(おおさき・ひろゆき)

1988年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京大学工学部電気工学科助手、講師、助教授、ドイツ・アーヘン工科大学客員研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻助教授を経て、2004年より現職。主に超電導を応用した機器・システムと電磁エネルギー変換機器の研究に従事。2004年電気学会電気学術振興賞進歩賞、2014年未踏科学技術協会超伝導科学技術賞、2018年IEC Thomas A. Edison Awardなど学術賞の受賞多数。

取材日: 2019年1月25日
取材・文/江口絵理、撮影/今村拓馬

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