100年先の人と地球の健康のためにご支援を
五十嵐圭日子
IGARASHI Kiyohiko
プラネタリーヘルス研究機構機構長 / 農学生命科学研究科教授

人の健康だけではなく、地球全体の健康を目指す「プラネタリーヘルス」。気候変動や海洋汚染など喫緊の課題が山積するいま、地球が健康でなくては人の健康も成り立ちません。その複雑に絡み合う「健康」を追求するためには学際的な取り組みが必要だと、2025年1月、全学的組織「プラネタリーヘルス研究機構(RIPH)」
が発足しました。
「気候変動をはじめとする環境問題は、非常にシリアスな段階に入っています。人間が健康的で、文化的で、現代的な生活を続けながら、地球環境もきちんと機能する。そんなシステムはどのように実現できるのか。これは究極の研究テーマだと思います」と語るのは、機構長を務める五十嵐先生。
どのくらい深刻なのか。例えば、大気中の二酸化炭素濃度は、少し前には350ppm程度でしたが、現在は400ppm程度。数十年後には600ppmに達すると予測されています。これは、過去80万年間の記録には見られない、人類がこれまで経験したことのない水準だといいます。
「600ppmは、『この部屋、空気悪いよね』と感じるレベルです。今なら窓を開け新鮮な空気を入れれば済みますが、それができなくなるということです」
RIPHが拠点を置く港区高輪の「東京大学GATEWAY Campus」では、100年先を見据えたさまざまな共同研究や産学協創が動き始めています。工学系研究科の田端和仁准教授はインフルエンザウイルスを検出する診断技術を研究。バイオ燃料などの研究を行ってきた五十嵐先生は、キャンパスが入るビルに設置されたメタン発酵槽を利用した取り組みに着手しています。詳細は未公表ながら、併設ラボではキノコの栽培も始まっているとか。水産大手のマルハニチロと進めているのは人と地球にやさしい食の開発。JR東日本のSuicaの利用データも研究に結び付けようと構想しています。


こうした多角的な挑戦に立ちはだかるのが、研究資金の問題です。現在は個別テーマごとの共同研究や企業連携で進めていますが、プラネタリーヘルスという「全体の課題」そのものには研究費がつきにくいのが現状です。
「既存の学問分野に当てはまらない取り組みに研究費をつける仕組みがないのです」と五十嵐先生。「共同研究は短絡的な成果を求められがちですが、100年先の未来を見据えた研究は成果が出るまでに時間がかかります。長期的な研究を継続していくためには、安定的な基金が必要です」
2025年度にRIPH基金を立ち上げ、長期的視点に立った研究や人材育成を支える基盤づくりを進めていきたいと考えています
「プラネタリーヘルスが達成されなければ、どんな研究も机上の空論になります。理想が通らなければ地球はもたない。だからこそ、ここから現実にしていきたいと思っています」




