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歳を取るとどうして白髪や薄毛になるの?→西村栄美|素朴な疑問vs東大

掲載日:2022年11月22日

素朴な疑問vs東大
「なぜ?」から始まる学術入門

言われてみれば気になる21の質問をリストアップし、その分野に詳しそうなUTokyo教授陣に学問の視点から答えてもらいました。知った気でいるけどいざ聞かれると答えにくい身近な疑問を足がかりに、研究の世界を覗いてみませんか。

Q.18 歳を取るとどうして白髪や薄毛になるの?

若い頃はフサフサでも年齢が高くなると頭に白いものが増え、抜け毛も増えるのはなぜですか。海苔を多く食べるといいのでしょうか。
A.色素や毛髪を作る幹細胞が減るから
回答者/西村栄美
NISHIMURA Emi
医科学研究所 教授

色素幹細胞が毛包にあった

普通食マウスと高脂肪食マウスの毛包
普通食を与えたマウス(左)に比べ、高脂肪食を6ヶ月摂取したマウス(右)では、赤い色がついた部分(毛包)が減っているのがわかります。

黒い毛髪を例に説明すると、その黒さの元はメラニンという色素です。メラニンは毛包(毛根)にある色素細胞が作ります。加齢などによって色素細胞が作られなくなるとメラニンが供給できず毛髪が白くなります。この色素細胞を生み出すのが、私が2002年に発見した色素幹細胞です。毛髪を作る元となる毛包幹細胞や色素細胞があることは既知でしたが、色素細胞を作る幹細胞が毛包の中ほどに存在しそれ自体は色素を持たないということは、知られていませんでした。

皮膚に白斑ができる尋常性白斑という病気があります。マイケル・ジャクソンが罹った病気として知られます。紫外線などをあてると毛穴から色素が出てきて皮膚が豹柄状になり、それが広がって治ります。私は皮膚科医時代にそうした現象を見ていたため、色素の元となる細胞が毛包にあるだろうと確信しました。人の皮膚を模倣したマウスで調べてみたところ、毛包のバルジ領域という場所に色素幹細胞があったのです。

毛髪は毛包が伸び縮みしながら成長期→退行期→休止期のサイクルを繰り返します。人の場合の周期は3~5年です。毛包が奥に伸びる成長期に色素幹細胞が作った色素細胞は、毛包の中ほどから根元へ運ばれ、それにより毛髪が黒くなります。成長が止まる退行期や次の毛が伸びる準備をする休止期には色素細胞も休みます。根元に色素細胞が残っていて働きが一時的に悪くなっただけなら、同じ毛で白から黒にスイッチすることもあります。まだ幹細胞が残っていれば白髪が抜けた後に黒髪が生えることもあります。

毛包のミニチュア化で薄毛に

加齢とともに毛包は徐々に小さくなります。すると生えてくる毛が細く短くなり、頭髪は全体的に薄くなります。この「毛包のミニチュア化」は50歳以上になるとよく起こる現象です。ここで鍵を握るのは17型コラーゲン(Col17a1/BP180)という物質です。錨のような形をして幹細胞を基底膜に繋ぎ止めている膜貫通性のコラーゲンです。これがなくなると、繋ぎ止められていた毛包幹細胞が自己複製せず毛にもならず、フケとなって毛穴から出ていきます。毛髪を作る細胞の供給源がなくなることで、しっかりした毛が生えなくなってしまいます。さらに、毛包幹細胞がなくなると色素幹細胞も維持できず、色素細胞が供給されずに白髪になるというわけです。

17型コラーゲンが失われるのは、加齢などで幹細胞内のDNAが損傷される際に起こるストレスに対して細胞が反応するためだと考えられます。残念ながら、体内のコラーゲンは外から注入しても無駄。現状、17型コラーゲンを維持するには過度のストレスを避けることがおすすめですが、私は17型コラーゲンを維持して薄毛を改善する技術の開発を進めているところです。最近の研究では、マウスに高脂肪食を食べさせると毛包幹細胞が早く枯渇して脱毛しやすいことがわかりました。揚げ物や脂身を控える工夫は有効かもしれません。

毛髪が薄くなるしくみ
参考図書
やさしくわかる!毛髪医療最前線』(朝日新聞出版、2018年)
毛髪に関する研究の数々を紹介。西村先生は加齢による白髪・脱毛の仕組みを解説しています。
 

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