FEATURES

English

印刷

温暖化でサンゴが北上しているってホント?→安田仁奈 GX入門/身近な疑問vs東大

掲載日:2023年4月11日

身近な疑問vs東大
GX(Green Transformation)に関係する21の質問にUTokyo教授陣が学問の視点から答えます。他人事にできない質問を足がかりにGXと研究者の世界を覗いてみませんか。

Q.4 温暖化でサンゴが北上しているってホント?

サンゴは温かい海が好きだから温暖化大歓迎?分布を変えているとしたらそれは悪いことなの?
サンゴに限らず生物は環境に応じて移動する

回答者/安田仁奈
YASUDA Nina

農学生命科学研究科 教授
海洋生態学

安田仁奈
豊富なサンゴ礁に恵まれた「カノカワ」と呼ばれる沖縄の海域。

適応か、移動か、それとも絶滅か

温暖化が進み、海水の温度も上昇しています。世界の平均海水温の上昇値は過去100年で約0.5度。日本の太平洋側の南海域では約1.2度も上昇しています。このように環境が大きく変化した際に、生物がたどる道は主に三つ。環境に適応するか、移動するか、絶滅するかです。私の研究対象であるサンゴの多くは移動して分布を変える戦略を取っています。

サンゴは、樹木と同じようにCO2を吸収してエネルギーと酸素を作り、生物の住処ともなる存在です。体内に共生する褐虫藻という藻類が光合成をしてサンゴにエネルギーを与えますが、海水温が変化すると共生のバランスが崩れます。もともと温かい海を好む生物ですが、水温が上がりすぎると褐虫藻が細胞から抜け出し、骨格が透けて見えるようになります。これが白化です。この状態が続くとサンゴは褐虫藻から栄養をもらえずに死んでしまいます。

現在、サンゴの北限は千葉の館山辺りで、20~30種が確認できます。現代より温暖だった縄文時代の館山の地層を調べると、サンゴの化石が約100種も出土し、現在より北の地域まで分布していたことがわかります。暑くなると北へ。寒くなると南へ。気候変動に応じて生物の分布が動くことを過去の化石も示しています。

緩やかな環境変化なら生物は適応できる

生物が移動すること自体に問題はありません。問題となるのは人間との関係です。温帯域の沿岸の人々は、アマモ場で幼生期をすごす魚を採って食べてきました。そこに、水温の変化によって見慣れぬ魚が入ってきます。たとえば沖縄では高級魚でも宮崎では馴染みがないので売れず、漁師は困ってしまう。ある魚が地域の特産物だとすると、それが採れなくなるのは大きな問題です。しかし、馴染みがない魚の食べ方を工夫するとか、新しい特産物に仕立てるなど、人間側が変化に適応できればよいわけです。

生物には環境に適応する力があります。温暖化が緩やかなほどその可能性は高まります。たとえば、水温が31度→32度なら大丈夫でも、24度→32度の急激な変化では死んでしまうでしょう。どこまでなら大丈夫かという予測は難しく、想定できない適応も起こり得ますが、その場合も変化はゆっくりなほうがいい。人間という生物にも当てはまることです。温暖化の速度を緩める努力には大きな意味があります。

2022年12月、生物多様性条約締約国会議(COP15)が行われ、2030年までに世界の陸と海の30%以上を保護区にすることが合意されました。エビデンスに基づいて海洋保護区を設定するための研究が必要です。サンゴは幼生分散の影響で地域間のつながりがあり、一つの種を守るなら別の種を守る必要もあります。そうした地域間の海洋生物のつながりを明らかにし、保護区で遺伝的多様性を保全するための枠組み作りに、私も貢献していきます。

サンゴは刺胞動物の仲間(個別の種としてあるわけではない)で、触手の数が8の倍数か6の倍数かで分類されます。基本的には骨格が硬いのが六放サンゴで、骨格が軟らかいのが八放サンゴ(ただしアオサンゴは硬い)。浅瀬にいる造礁サンゴと違い、宝石サンゴは深海にいます。
図版作成:野中正法博士
Q.サンゴは子育てするってホント?
A.子育てする種としない種がいます

私が研究しているアオサンゴは子育てをします。恐竜の繁栄より前のジュラ紀から存在する「生きる化石」。触手で包み込んでしばらく育てた後、触手を引っ込めると、幼生は流れに乗って旅立ちます。保育するのはメスだけ。成長速度が速くて数も多いミドリイシ属は雌雄同体の放精放卵型。バンドルという精子と卵子の塊を海中に出し、他の個体が出すバンドルとぶつかって受精します。  
保育中のアオサンゴ。丸く見えるのが幼生。
 

関連リンク

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる