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どうして電化が温暖化防止に必須なの?→瀬川浩司 GX入門/身近な疑問vs東大

掲載日:2023年4月25日

身近な疑問vs東大
GX(Green Transformation)に関係する21の質問にUTokyo教授陣が学問の視点から答えます。他人事にできない質問を足がかりにGXと研究者の世界を覗いてみませんか。

Q.6 どうして電化が温暖化防止に必須なの?

日本の電力の約8割は化石燃料から作られているのにそれでも電気は地球温暖化防止に役立つの?
電力は将来100%非化石エネルギーで作れるようになるから

回答者/瀬川浩司
SEGAWA Hiroshi

総合文化研究科 教授
エネルギー科学

瀬川浩司

CO2排出削減には再エネを増やすのが一番

瀬川研究室で開発した45cm² のフレキシブルペロブスカイト太陽電池モノリシックミニモジュール

温暖化の原因となるCO2の発生源の9割以上は、自動車燃料や発電燃料などのエネルギー由来です。電力の生産でも石油や石炭や天然ガスを燃やす火力発電では大量のCO2が排出されます。それを減らすには、燃料をCO2を出さない非化石エネルギーに置き換えること(エネルギー転換)が最も有効です。非化石エネルギーの中では太陽光発電や風力発電の導入拡大が進み、近い将来には電力の100%が再生可能エネルギーを中心とした非化石エネルギーで作られるようになると考えられます。世界的に進むガソリン車規制と電気自動車(EV)の導入拡大も、電力が100%非化石化することを前提にしています。

実際に近年、事業に必要な電力を100% 再生可能エネルギーで賄うというRE100(Renew-able Energy 100%)の取り組みが世界の企業に広がっています。この取り組みには、すでに世界で380社以上の有力企業が参加しています。企業は社会への責任として再エネ導入を推進しないと認めてもらえなくなりつつあります。

たとえば米国ハワイ州では、2045年に100%再エネにすることを法律で定め、太陽光発電を推進する事業者や消費者への税控除を導入しました。オフィスや家に太陽光パネルと蓄電池を設置すれば税金が控除されます。ハワイ州は電力価格が日本より高いので、一般家庭で太陽光パネルと蓄電池のセットに税控除が加わるととても大きなメリットがあり、2045年を待たずに電力の再エネ100%が実現しそうです。

これに対して日本の第6次エネルギー基本計画では、2030年の再エネ電力導入目標が36~38%ですが、現行のFITやFIP制度では導入インセンティブが働きにくく今のペースでは届きません。日本でも税控除を導入して企業の内部留保を活用すべきでしょう。再エネ事業者と電力消費企業が直接契約して太陽光発電の電力を初期費用なしに安定調達するPPA(Power Purchase Agreement)モデルも推進すべきです。

一方、国土の狭い日本では再エネ設備の設置場所も重要です。風力発電は風況が良く環境問題を起こしにくい洋上風力発電に期待が持たれます。太陽光発電は工場の屋根やビルの壁などどこでも設置できる軽量高効率の太陽電池の研究開発が進んでいます。その一つがペロブスカイト太陽電池です。この電池の原料となるヨウ素の生産量は日本が世界2位で、従来の太陽電池で課題だった資源問題も回避できます。将来的にはEVのルーフや電動航空機などに使える高性能なものも開発できるでしょう。このような再生可能エネルギー新技術開発への投資がとても重要です。

瀬川先生の本(監修)
『ペロブスカイト太陽電池の開発最前線』 (シーエムシー出版、2019年) ペロブスカイト太陽電池の開発史と光電変換素子への展開、最新技術などを詳しく解説した研究者必読の一冊。

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