UTokyo研究室発グッズ集
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第2回
昨秋、霜降り豚肉を使った「ポークジャーキー」がUTCC※から発売されました。
餌に含まれるアミノ酸の組成を変えることで誕生した霜降り豚肉です。
このアミノ酸に関する研究を行った農学生命科学研究科の高橋先生に、餌の改良や筋肉に脂肪が溜まるメカニズムなどについて聞きました。
※東京大学コミュニケーションセンター
アミノ酸研究から生まれた柔らかい霜降り豚肉
高橋伸一郎
TAKAHASHI Shin-Ichiro
農学生命科学研究科 教授


必須アミノ酸である「リジン」がカギに
2024年10月にUTCCから発売される新商品「ポークジャーキー」。広く普及している牛肉を使った乾燥肉ではなく、豚肉を使った珍しいジャーキーです。使われているのは、岐阜県のブランド豚「瑞浪ボーノポーク」という、ジューシーでやわらかい霜降りの豚肉。含まれる脂の量は一般的な豚肉の約2倍です。
この霜降り豚肉の開発につながったのが、農学生命科学研究科の高橋伸一郎先生らによるアミノ酸に関する共同研究です。カギとなるのはリジンという必須アミノ酸の一種。体内で作り出すことができないため、食べ物から摂取しなくてはいけません。このリジンの割合を減らした餌を豚に与えると、筋肉に脂肪が多く蓄積され、霜降り肉ができるということが分かりました。
「リジンは体のタンパク質を構成する、必須アミノ酸の一種です。そのため、餌に含まれるリジンの量を減らしすぎると豚の体重が落ち、体が成長しにくくなってしまいます。体重を大きく落とさずに、霜降り割合の高い豚肉を作る。そのための最適なバランスを研究するのがスタートでした」
一般的な豚肉の脂肪含量は約3%くらいですが、餌を改良することで安定的に、脂肪含量6~7%の霜降り肉を供給することを目指しました。実験では、成長期の豚を、リジンが0.65%含まれる通常の餌を与えるグループと0.40%含まれる低リジン食を与えるグループに分けました。これらの餌を2か月間食べさせたところ、低リジン食を摂取し続けた豚の脂肪含量は通常の餌を摂取した豚の約2倍、平均6.7%になることが分かりました。


Katsumata et al. (2005)
脂肪肝の研究が霜降り豚の開発につながる
低リジン食にするとなぜ脂肪が筋肉に溜まるのか? 高橋先生の研究によると、体内でリジンが減少すると、筋肉に脂肪を取り込むトランスポーターというタンパク質が増加し、脂肪が蓄積します。また、リジンが欠乏した際に上昇するスレオニンというアミノ酸の上昇によって脂肪の分解も止まるため、脂肪がどんどん溜まっていきます。その過程で、周囲にも脂肪細胞ができ、結果としてサシが入るという仕組みがあると高橋先生は説明します。
アミノ酸の研究のもともとの始まりは、人間の脂肪肝の研究だったと話す高橋先生。栄養失調でタンパク質が足りない子どものお腹が出ているのはなぜなのかという疑問から始まった研究でした。アミノ酸が足りないと脂肪肝になるというメカニズムの解析と治療に関する研究の取り組みが、回り回って霜降り豚肉の研究に繋がりました。
「科学的な証拠は分かっていないけれど、皆が知っている事実のようなものが世の中にはたくさんあります。アミノ酸についての研究も、そのような栄養失調に関する疑問から始まり、それが畜産に応用されました。食べ物を作るために始めたわけではない、というところが研究の醍醐味かもしれません」