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東京大学先端科学技術研究センター、富士フイルムによる新分野開設及び、東大初の教授(特例)の設置記者発表

東京大学先端科学技術研究センター、富士フイルムによる
新分野開設 及び、東大初の教授(特例)の設置

1.発表者

東京大学先端科学技術研究センター


2.発表内容: 

東京大学先端科学技術研究センター(西村幸夫所長。以下、先端研)は、富士フイルム株式会社(中嶋成博社長)のご寄附により、平成25年4月1日より新分野「計量生物医学部門」を開設いたしました。本分野では、生体反応に関わる複数の生体分子を同定してダイナミックな相互作用を解析することにより、生命現象の統合的理解への新しい切り口を見出し、がんや難治性疾患の新たな治療薬の開発を目指します。

新たに開設された「計量生物医学部門」では、平成23年制定の「東京大学の定めた優秀な若手研究者のポストおよび人材流動性の向上のための方策」に基づき「教授( 特例) 」ポストを東大で初めて設置しました。先端研は、新分野の 「教授(特例)」として浜窪隆雄氏を選出しました。これにともない、同氏は平成25年3月をもって先端研分子生物医学分野の教授を退職し 、同分野の教授ポストは若手教員・研究者ポストとして運用されます。教授(特例)ポストの設置により、先端研は、優秀な若手人材のためのポスト確保を実現したこととなります。

近年ゲノミクス(注1)やプロテオミクス(注2)などの網羅的解析法の進歩により、生体反応が複数の分子により複合的に調節されていることが明らかになってきました。しかし、がんや重症感染症など難治性疾患の解明には、生体分子の生体レベルでの時間的空間的な相互作用を解析する新たな手法の開発が必要です。「計量生物医学部門」では、高機能抗体を用いた高感度プロテオミクスによる複合体分子同定、構造解析およびコンピュータシミュレーションを用いたタンパク質相互作用の解析とドラッグデザイン、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移:注3)や軟X線顕微鏡によるライブセルイメージング(注4)などの技術を開発します。そして、その成果をもとに、分子パターン認識を基礎とした自然免疫や細胞分裂のメカニズムの解明など、細胞レベルおよび生体レベルの分子相互作用変化を解析することにより、がんや重症感染症などの新しい創薬コンセプトの開拓を目指します。

先端科学技術研究センターでは、これまでも抗体医薬の開発やシステム生物学の開拓など同領域での先導的な研究を展開しており、その技術や経験を基盤としてさらにコンピュータサイエンスや工学諸分野を融合させ、関連企業とも連携することにより、様々な難病に対する有効な治療法や診断法を生み出して行けるものと期待しております。

 

新分野の概要

・ 分野の名称: 計量生物医学部門
・ 主任教授   : 浜窪隆雄 前東京大学先端科学技術研究センター分子生物医学分野教授
                               任期:平成25年4月1日から平成30年3月31日までの5年間

3.問い合わせ先: 

東京大学先端科学技術研究センター 教授 浜窪隆雄
 

4.用語解説
注1:ゲノミクス
ゲノムと遺伝子について研究する生命科学の一分野。生物学的情報の網羅的な解析に関する学問体系であるオミクスの一つ。ある生物の染色体上の全ヌクレオチド配列を調べ、構造遺伝子、制御遺伝子および非コードDNA配列に関する情報を研究する。

注2:プロテオミクス
プロテオミクスとは構造と機能を対象としたタンパク質の大規模網羅的な研究のこと。

注3: FRET (Fluorescence resonance energy transfer、蛍光共鳴エネルギー移動またはフェルスター共鳴エネルギー移動)
近接した2個の色素分子(または発色団)の間で、励起エネルギーが電磁波にならず電子の共鳴により直接移動する現象。オワンクラゲから抽出されたGFP(Green Fluorescent Protein)の発見により、生きた細胞や組織でタンパク質分子相互作用の観察に用いられるようになった。

注4:ライブセルイメージング (Live-cell imaging)
細胞内での生体分子の挙動を、細胞を固定することなく生きたまま観察する技術。
GFP(注3)との融合タンパク質や共焦点レーザー顕微鏡などの発達により開発が進み、新しい生命像を解析する技術として期待されている。
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