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紙の手帳の脳科学的効用について ~使用するメディアによって記憶力や脳活動に差~ 研究成果

掲載日:2021年3月19日

 東京大学大学院総合文化研究科教授の酒井 邦嘉と同大学院生の梅島 奎立は、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(本社:東京都中央区、代表取締役社長:張 士洛)および株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎)との共同研究において、スケジュールなどを書き留める際に使用するメディア(紙の手帳や、スマートフォンなどの電子機器)によって、記銘(記憶の定着)に要する時間が異なり、想起(記憶の再生)での成績や脳活動に差が生じることを初めて明らかにしました。
 本研究グループは、参加者に具体的な予定を紙の手帳か電子機器でメモさせ、MRI装置(注1)と想起課題を用いて予定の想起のプロセスを調べました。その結果、記憶処理および言語処理に関係する脳領野の活動が、紙の手帳を用いた群で定量的に高くなりました。この結果は、電子機器にはない紙の特性が、五感を通して空間的な手がかりを与えることで、より深い記銘を可能にするという仮説を支持します。教育やビジネスにおいて電子機器が多用される中、記憶力や創造性につながる紙媒体の重要性が明らかとなりました。

(注1)MRI装置
 MRI(磁気共鳴映像法)は、脳の組織構造を、水素原子の局所磁場に対する応答性から測定し画像化する手法で、全く傷をつけずに外部から脳組織を観察する方法として広く使用されています。そのために使用する医療機器が、超伝導磁石によって高磁場(3テスラ程度)を発生させるMRI装置です。注2で述べる「fMRI」でも、このMRI装置を使用します。

論文情報

Keita Umejima, Takuya Ibaraki, Takahiro Yamazaki, Kuniyoshi L. Sakai*, "Paper notebooks vs. mobile devices: Brain activation differences during memory retrieval," Frontiers in Behavioral Neuroscience : 2021年3月19日, doi:10.3389/fnbeh.2021.634158.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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