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アブラムシが持つ表面加工技術 ~植物をあやつり巣内を撥水コーティング~ 研究成果

掲載日:2018年10月17日

 東京大学大学院総合文化研究科の植松助教と産業技術総合研究所生物プロセス研究部門の 深津武馬首席研究員らの研究グループは、昆虫が植物を操作して撥水性を持つ巣を作ることを発見しました。 植物上に虫こぶ(注1)と呼ばれる巣を作り、その内部で生活するアブラムシは、 自らの排泄物である液状の甘露を虫こぶの外に捨てる必要があります。
 本研究グループは、ケヤキの葉上に作られたアブラムシの虫こぶの内部を詳細に観察したところ、 一部の種の虫こぶ表面が、植物由来の微小な毛で覆われていることを発見しました。 さらに、虫こぶ表面の撥水効果を調べた結果、この微小な毛とアブラムシが分泌するワックスとが 組み合わさり微細な凹凸構造を作ることで、きわめて高い撥水性を示すことがわかりました。 複数種の虫こぶを比較した結果、この撥水表面構造はアブラムシが誘導することで形成されており、 甘露を巣外へ捨てやすくする撥水構造の形成能力が自然選択により進化したことを示唆しています。
 本研究は、生物が他の生物の表面微細構造を操作し、撥水性をもたらすことを実証した初の例であり、 適応進化によって生じた昆虫の環境改変能力の高さを示すだけでなく、生物が持つ性質を模倣した材料の 開発についても新たな視点を与えることが期待されます。


用語解説:
(注1)虫こぶ:昆虫類などの寄生の影響により、植物の芽や葉などの一部がふくれて変形したもので、内部が空洞になっており、そこに暮らす昆虫に食物と住みかを提供する。虫癭(ちゅうえい)やゴール(Gall) と呼ばれることもある。アブラムシにおいては、摂食時に口針から注入される唾液成分によって虫こぶ形成が誘導されると考えられているが、その機構は不明である。

論文情報

Keigo Uematsu*, Mayako Kutsukake, Takema Fukatsu*, "Water-repellent plant surface structure induced by gall-forming insects for waste management," Biology Letters: 2018年10月17日, doi:10.1098/rsbl.2018.0470.

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