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光合成タンパク質複合体の修復メカニズムの一端を解明――リパーゼによる光化学系II複合体の解体がその後の修復を促進する――研究成果

掲載日:2022年10月3日

発表者

神保 晴彦(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 助教)
和田 元(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 教授)

 

発表のポイント

  • 光化学系II複合体に含まれる脂質分子が、リパーゼによって分解されることで、タンパク質複合体が解体され、修復されることを明らかにした。
  • 光合成タンパク質複合体の解体・修復に、膜脂質の分解というステップがあることを発見した。
  • 光合成の修復機構は、タンパク質の代謝回転に着目した研究がほとんどで、脂質や他の小分子については注目されてこなかった。本研究成果は、光合成タンパク質複合体の修復にタンパク質だけではなく、脂質分子が関わっていることを示し、今後の研究に新たな重要な視点を与える画期的なものである。

発表概要

 光化学系II複合体(PSII)は、光合成反応のうち、光エネルギーを使って水を酸素に分解する重要な働きを持っていますが、過剰な光エネルギーを受けると容易に失活してしまいます。光合成生物は、失活したPSIIを迅速に解体・修復する機構を持っており、それによって光合成活性を維持しています。PSII修復の過程では、まずPSIIのタンパク質超複合体を解体する必要がありますが、その分子メカニズムは明らかではありませんでした。

 東京大学大学院総合文化研究科の神保晴彦助教と和田元教授は、PSIIに含まれる脂質分子に着目し、脂質分子を分解するリパーゼ酵素の働きによって、PSII超複合体が解体されることを明らかにしました。

 これまでのPSII修復の研究は、高速で代謝回転されるタンパク質分子にのみ着目した研究がほとんどで、脂質などの補因子については見過ごされてきました。本研究の成果は、光合成の機能だけでなく、活性制御や修復などのダイナミックな変化においても、脂質分子が関わるという新しい視点を示し、光合成分野の研究の方向性を大きく転換させた点で非常に意義深いものとなっています。光合成研究の発展によって、将来、光合成生物を用いた物質生産研究の進展が期待されます。

 本研究成果は、2022年10月3日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Plant Physiology」のオンライン版に掲載されました。

発表詳細は大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

論文情報

Haruhiko Jimbo* and Hajime Wada, "Deacylation of galactolipids decomposes photosystem II dimers to enhance degradation of damaged D1 protein," Plant Physiology: 2022年10月3日, doi:10.1093/plphys/kiac460.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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