カニ殻から農作物の免疫力を引き出すオリゴ糖の効率的合成に成功研究成果
掲載日:2022年11月25日
東京大学
北海道大学
東京理科大学
昭和電工株式会社
発表者
小林 広和(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻/附属先進科学研究機構 准教授)
鈴木 悠介(北海道大学 大学院総合化学院 修士課程(研究当時))
佐川 拓矢(東京理科大学 工学部工業化学科 助教)
齋藤 信(昭和電工株式会社 基礎化学品事業部 新事業開発プロジェクトリーダー)
福岡 淳(北海道大学 触媒科学研究所 教授)
発表のポイント
- カニ殻の主成分であるキチンを分解し、植物の免疫力を引き出すオリゴ糖を効率的に合成することに成功しました。
- 炭素の触媒作用と粉砕装置の機械的な力を組み合わせることで、有効なオリゴ糖以外の物質の生成を大幅に抑制することができました。
- 農業でこのオリゴ糖を使用して農作物の免疫力を引き出すことにより、低農薬でも病気にかかりにくくなり、収穫量が増えることが期待されます。
発表概要
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻/附属先進科学研究機構の小林広和准教授、北海道大学触媒科学研究所の福岡淳教授、鈴木悠介大学院生(研究当時)、東京理科大学工学部の佐川拓矢助教、昭和電工株式会社基礎化学品事業部の齋藤信プロジェクトリーダーの研究グループは、カニ殻から大量に取れるキチンを分解し、キチンオリゴ糖を効率的に合成することに成功しました。
キチンオリゴ糖は植物の免疫を活性化するため、農作物を低農薬でも病気にかかりにくくする農業資材として注目されていますが、キチンは非常に強固で、難分解性の物質であるため、効率的な合成方法が確立されていません。今回本研究グループは、炭素触媒とキチンを一緒にボールミル処理することによって、キチンオリゴ糖が高収率で得られることを見出しました。
本研究成果は、2022年11月23日(中央ヨーロッパ時間)にドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に掲載されました。
発表詳細は大学院総合文化研究科のページからご覧ください。
論文情報
Hirokazu Kobayashi*, Yusuke Suzuki, Takuya Sagawa, Makoto Saito, Atsushi Fukuoka*, "Selective Synthesis of Oligosaccharides by Mechanochemical Hydrolysis of Chitin over a Carbon-Based Catalyst," Angewandte Chemie International Edition: 2022年11月23日, doi:10.1002/anie.202214229.
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