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細胞運命の不平等さを定量化する ―― 細胞系譜情報を利用した統計解析手法を構築 ――研究成果

掲載日:2022年12月6日

発表者

山内 竣平(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 博士課程(研究当時))
野添 嵩(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 助教)
大倉 玲子(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 特任研究員)
若本 祐一(東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 教授/東京大学 生物普遍性連携研究機構 教授)

発表のポイント

  • 細胞の系譜情報を利用して、任意の細胞形質に対する選択強度・適応度を評価できる新たな統計解析手法を構築した。
  • 従来の集団遺伝学の数理フレームワークを拡張し、自然選択がかかる単位を個々の細胞ではなく細胞の「歴史」と捉えることで、細胞増殖や分化の特定モデル に依存しない一般的な解析手法を確立した。
  • 1細胞イメージング技術やDNAバーコード技術により、細菌やがん細胞の増殖、胚発生、幹細胞分化などで細胞系譜情報が得られるようになりつつある。この解析手法を細胞系譜情報に適用することで、細胞の増殖能や運命決定にとって特に重要な形質を明らかにできる可能性がある。

発表概要

 東京大学大学院総合文化研究科の山内竣平大学院生(研究当時)、野添嵩助教、大倉玲子特任研究員、若本祐一教授らの研究チームは、細胞形質の揺らぎ・ばらつきにかかる選択強度や適応度地形 を定量的に評価できる、細胞系譜を利用した新たな統計解析手法を構築しました。

 この手法を用いることで、1細胞レベルで普遍的に観察される遺伝子発現量や成長能といった細胞形質のばらつきに対し、そこにかかる選択の強さや、形質の状態の違いに伴う適応度差を定量することが可能になりました。さらにこの解析手法を用いることで、細胞集団内の形質のばらつきが集団増殖率にどの程度寄与しているかという情報も得ることができます。実際にこの解析手法を実験データに適用することで、細菌やがん細胞において1細胞レベルの成長のばらつきが集団増殖率を増加させていることを明らかにしました。この解析手法は、様々な生命現象において重要と考えられている細胞形質のばらつき・ゆらぎの役割の解明に貢献すると期待できます。

 本研究成果は、2022年12月6日(英国時間)に科学誌「eLife」のオンライン版に掲載されました。

 
 

発表詳細は大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

論文情報

Shunpei Yamauchi, Takashi Nozoe, Reiko Okura, Edo Kussell, Yuichi Wakamoto*, "A unified framework for measuring selection on cellular lineages and traits," eLife: 2022年12月6日, doi:10.7554/eLife.72299.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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