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統合失調症、うつ病、双極性障害に関連した脳内ネットワーク異常を発見研究成果

掲載日:2023年3月15日

東京大学
和歌山県立医科大学

発表者

小池 進介(東京大学 大学院総合文化研究科 附属進化認知科学研究センター 准教授/東京大学 国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)連携研究者)
石田 卓也(和歌山県立医科大学 神経精神医学講座 助教/東京大学 大学院総合文化研究科附属進化認知科学研究センター 特任研究員(研究当時))

発表のポイント

  • 精神疾患の安静時機能的磁気共鳴画像の大規模データセットを用いて、統合失調症、うつ病、双極性障害に共通する脳内大規模ネットワーク間の因果性結合異常を明らかにしました。
  • 統合失調症、うつ病、双極性障害それぞれの疾患に特異的な脳内大規模ネットワーク間の因果性結合異常も明らかにし、それらが各疾患の精神症状と相関していることを示しました。
  • 脳内大規模ネットワーク間の因果性結合異常は、精神疾患の病態機序解明における重要なバイオマーカーになる可能性を示唆しています。

発表概要

 東京大学大学院総合文化研究科附属進化認知科学研究センター・小池進介准教授(東京大学 国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 連携研究者)、和歌山県立医科大学神経精神医学講座・石田卓也助教、東京大学医学部附属病院精神神経科・笠井清登教授(東京大学 国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 主任研究者)、東京大学医学部附属病院放射線科・阿部修教授、広島大学医学部附属病院精神神経科・岡本泰昌教授、京都大学医学部精神医学講座・村井俊哉教授、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)・川人光男所長らの研究グループは、安静時機能的磁気共鳴画像(rsfMRI)から得られた脳機能画像を用いて、統合失調症、うつ病、双極性障害の脳内大規模ネットワーク間の因果性結合異常を評価し、3疾患に共通する因果性結合異常とともに各疾患特異的な因果性結合異常のパターンを明らかにしました。

 ヒトの認知機能の遂行は、機能的に接続された別々の脳領域同士が共同して働くことで支えられ、様々な脳の大規模ネットワークが存在していることが知られています。これまでの多くの研究から、精神疾患では脳内の大規模ネットワーク間の機能的な結合異常があることが分かっていましたが、サンプルサイズも小さく、その殆どが複数ではなく単一の精神疾患群と健常者群との比較に留まることから、一貫した結論を得ることができていませんでした。

 そこで本研究グループでは、日本国内3施設の4つの大規模rsfMRIデータセットを用いて、統合失調症、うつ病、双極性障害における7つの脳内大規模ネットワーク間の因果性結合を評価し、比較することで、動機付けや意思決定、記憶や言語処理に関係する大脳辺縁ネットワークにおける自己抑制性の因果性結合が3疾患で共通して減少していることを明らかにしました。また、各精神疾患特異的な脳内大規模ネットワーク間の因果性結合異常も明らかにし、これらが各疾患の症状と関連することがわかりました。今後、精神疾患における脳内大規模ネットワーク間の結合異常をさらに精密に検討することで、精神疾患の生物学的病態基盤の解明につながることが期待されます。

図1.7つの脳内大規模ネットワーク
 
図2.脳内大規模ネットワーク間の因果性結合の群間差
統合失調症群vs健常者群の図で黄色から赤色(水色から青色)で示された値は、因果性結合が統合失調症の方が健常者よりも大きい(小さい)ことを示している。
 

発表詳細

大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

論文情報

Takuya Ishida, Yuko Nakamura, Saori Tanaka, Yuki Mitsuyama, Satoshi Yokoyama, Hotaka Shinzato, Eri Itai, Go Okada, Yuko Kobayashi, Takahiko Kawashima, Jun Miyata, Yujiro Yoshihara, Hidehiko Takahashi, Susumu Morita, Shintaro Kawakami, Osamu Abe, Naohiro Okada, Akira Kunimatsu, Ayumu Yamashita, Okito Yamashita, Hiroshi Imamizu, Jun Morimoto, Yasumasa Okamoto, Toshiya Murai, Kiyoto Kasai, Mitsuo Kawato, Shinsuke Koike*., "Aberrant large-scale network interactions across psychiatric disorders revealed by large-sample multi-site resting-state functional magnetic resonance imaging datasets," Schizophrenia Bulletin: 2023年3月15日, doi:10.1093/schbul/sbad022.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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