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20種類の翻訳因子を再生産しながらDNAを複製する人工分子システムを開発 ――自律的に増殖する人工細胞構築に活路を開く――研究成果

掲載日:2023年4月14日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

発表のポイント

  • 細胞が増殖するためには、細胞を構成する全ての成分(DNA、RNA、タンパク質など)を再生産する必要があるが、この能力を持つ人工物はいまだ作られていない。
  • 本研究では、タンパク質の翻訳にかかわる20種類のアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)をDNAから再生産させながら、短期間ではあるがDNAの複製を続けることに世界で初めて成功した。
  • このシステムに遺伝子を追加することで、将来的には増殖する人工細胞の構築が可能となり、効率的な有用物質生産への貢献が期待される。
20種類の翻訳因子を再生産しながらDNAを複製する人工分子システム

発表概要

 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の萩野勝己大学院生、市橋伯一教授(同研究科附属先進科学研究機構/同大学生物普遍性連携研究機構)らは、核酸やタンパク質といった無生物材料のみを用いて、生物の特徴である「DNAとタンパク質の再生産の仕組み」を部分的に持つ人工分子システムの構築に世界で初めて成功しました。

 生物のように栄養をあたえるだけで増え続ける人工物は未だ作られていません。それは、細胞を構成する全ての成分を再生産できる反応系を作ることができていないためです。本研究グループは、Phi29 DNA複製酵素を用いた人工DNA複製系と大腸菌由来の無細胞翻訳系を組み合わせることで、タンパク質の翻訳に必要な20種類のアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)とそれをコードしたDNAを4世代にわたり再生産し続けることに成功しました。

 今回開発した人工分子システムに転写翻訳に必要な遺伝子をさらに追加していくことで、将来的にはアミノ酸や塩基などの低分子化合物をあたえるだけで自律的に増殖する人工細胞へと発展させることができます。そのような人工細胞ができれば、現在行われている医薬品開発や食料生産のような生物を使った有用物質生産がより安定で制御しやすいものになると期待できます。

発表詳細

大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

発表者

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻
萩野 勝己(博士課程)
市橋 伯一(教授)<東京大学 大学院総合文化研究科 附属先進科学研究機構/東京大学 生物普遍性連携研究機構>
 

論文情報

Katsumi Hagino and Norikazu Ichihashi*, "In vitro transcription/translation-coupled DNA replication through partial regeneration of 20 aminoacyl-tRNA synthetases," ACS Synthetic Biology: 2023年4月13日, doi:10.1021/acssynbio.3c00014.
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