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異論を唱えるレビューが役立つ理由とは?――同調圧力から解明する新たな発見――研究成果

掲載日:2023年6月27日

東京大学

発表のポイント

  • 従来の研究では、オンラインレビューにおいて、多数派の意見や平均的な評価から、商品選択に有用な情報を引き出すことが重視されてきましたが、本研究では、多数派の意見から離れた、異論を唱えるアウトライアーレビュー(outlier reviews)に注目しました。
  • 分析の結果、異論を唱えるアウトライアーレビューが、より中立的で簡潔かつ十分な情報を提供する傾向があり、多数派の意見をなすレビューよりも商品選択に有用な情報を提供することが明らかになりました。
  • 本研究は、オンラインレビューから有用な情報を引き出す新しいアプローチを提供するため、企業や消費者が大規模なオンラインレビューに対してこのアプローチを採用することで、より良い意思決定ができるようになると期待されます。

アウトライアーレビューが有用になる仕組み(概念図)
 

発表概要

 東京大学大学院総合文化研究科の植田一博教授と山口大学大学院創成科学研究科の楊鯤昊(ヤン・クンハオ)講師(研究当時:中央学院大学法学部)らによる研究グループは、大規模なオンラインレビューのデータセットを用いて、多数派の意見からずれた異論を唱えるアウトライアーレビュー(outlier reviews)が、多数派の意見をなすレビューよりも中立的で簡潔かつ十分な情報を提供するために、商品選択を行う際に有用性が高いことを明らかにしました。

 従来の従来の集合知に関する研究では、異論を唱えるレビューは大きなバイアスをもつため、多数派の意見をなすレビューと比較して商品選択の判断に有用ではないとされてきましたが、本研究では異論を唱えるレビューが実際にはより有用なことが示されました。また、社会心理プロセスの一種である「同調圧力」(注1)に対する新しい考え方を提示しており、同調圧力がレビュワー(レビュー作成者)にポジティブな影響を与えていることを明らかにしました。すなわち、アウトライアーレビューのレビュワーは、同調圧力が存在するためにかえって自身のレビューの質を高めようとしていることが示唆されました。

 今後は、この研究成果を活用して、オンラインレビューサイト(例:Amazon.com)や企業が、中立性、簡潔性、十分性の点でより質の高い情報提供を行うことや、消費者側も異論を唱えるアウトライアーレビューに注目することで、より良い商品選択やサービス利用が可能になると期待されます。このように本研究の成果は、マーケティングや消費行動に大きな効果をもたらすと期待されます。

 本研究成果は、2023年6月27日(英国夏時間)に英国オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

発表詳細

大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

発表者

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻
植田 一博(教授)
 
東北大学大学院情報科学研究科
藤崎 樹(特任研究員)〈研究当時:東京大学大学院総合文化研究科 特任研究員〉
 
山口大学大学院創成科学研究科
楊 鯤昊(講師)〈研究当時:中央学院大学法学部 講師〉

論文情報

Kunhao Yang*, Itsuki Fujisaki, Kazuhiro Ueda*, "Social influence makes outlier opinions in online reviews offer more helpful information," Scientific Reports: 2023年6月27日, doi:10.1038/s41598-023-35953-4.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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