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超伝導量子コンピュータにおける新しい2量子ビットゲート方式の発明・実証――製造ばらつきに対する高い耐性、超伝導量子ビットの集積化を加速へ――研究成果

掲載日:2023年6月29日

東京大学
理化学研究所

発表のポイント

  • デコヒーレンスの原因となる磁場を用いることなく、超伝導量子ビット作製時の周波数ばらつきに強い耐性を持つ新しい2量子ビットゲート方式を発明・実証した。
  • 超伝導量子コンピュータの基本素子として有力視される単一接合トランズモン量子ビットを用いて計算する際、誤りの原因となる残留相互作用をゲート速度の犠牲なく逓減できることを世界で初めて見いだし、実験的にも実証した。
  • 単一接合トランズモン量子ビットの課題であった製造時の周波数ばらつきに対する脆弱性や残留相互作用の問題を解決し、近年発展を続ける超伝導量子コンピュータの開発において量子ビット数増加のさらなる加速に貢献することが期待される。

量子カプラーを用いた新しい量子ゲート方式
 

発表概要

 東京大学大学院総合文化研究科の白井菖太郎大学院生、大久保裕太大学院生(研究当時)、野口篤史准教授、理化学研究所量子コンピュータ研究センターの中村泰信センター長らの研究グループは、コヒーレンス時間(注1)の長さと配線の簡便さで優れる超伝導量子ビットの一種である単一接合トランズモン量子ビット(注2)において、長年課題であった量子ビット製造時の周波数ばらつきに対する脆弱性と量子ゲート(注3)の精度を低下させ計算中の誤りを生む残留相互作用(注4)の問題を克服する、新しい2量子ビットゲート方式を発明しその動作を実験的に実証しました。

 本成果は追加の磁場制御配線を導入せずに高速なゲート操作と残留相互作用低減の両立が可能であり、希釈冷凍機(注5)内部で扱うことのできる量子ビット数を将来的に増やすことを通じて、次世代の社会基盤技術となることが期待される量子コンピュータの開発に貢献します。

 本研究成果は、2023年6月29日(米国東部夏時間)に国際科学誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されました。

発表詳細

大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

発表者

東京大学 大学院総合文化研究科
        野口 篤史(准教授)〈兼:理化学研究所 量子コンピュータ研究センター ハイブリット量子回路研究チーム(チームリーダー)〉
        白井 菖太郎(博士課程)
        大久保 裕太(研究当時:修士課程)
 
理化学研究所 量子コンピュータ研究センター
        中村 泰信(センター長)〈兼:東京大学 大学院工学系研究科(教授)〉

論文情報

Shotaro Shirai, Yuta Okubo, Kohei Matsuura, Alto Osada, Yasunobu Nakamura, Atsushi Noguchi, "All-microwave manipulation of superconducting qubits with a fixed-frequency transmon coupler," Physical Review Letters: 2023年6月29日, doi:10.1103/PhysRevLett.130.260601.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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