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第一回緊急事態宣言後の思春期海馬変化が明らかに研究成果

掲載日:2024年2月9日

2024年2月9日
東京大学

発表のポイント

  • COVID-19パンデミックのために発令された第一回緊急事態宣言が思春期海馬の一過性体積増加、3つの海馬亜領域体積および海馬の微細構造統合の増加と関連していることを示しました。
  • 本研究は東京ティーンコホート・サブサンプル研究(pn-TTC)プロジェクトの大規模な縦断脳画像データセットを用いて、COVID-19パンデミックに関連するマクロおよびミクロ脳構造変化を体系的に調査する初めての試みです。
  • 重大なライフイベントが思春期における海馬構造の発達に一時的な影響を与える可能性があり、ライフイベントによって海馬の可塑性と脆弱性がどのように働くのか、解明する手がかりになると考えられます。
ヒト脳MRIでの海馬

発表概要

 東京大学大学院総合文化研究科附属進化認知科学研究センター・蔡林(サイリン)特任研究員と小池進介准教授(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 連携研究者)、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻・笠井清登教授(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN) 主任研究者)らによる研究グループは、思春期脳発達に着目した大規模な磁気共鳴画像(MRI)データセットに非線形統計モデルをあてはめることで、第一回緊急事態宣言後における思春期の海馬と海馬亜領域(注1)の体積、および海馬の微細構造統合(注2)の変化を世界で初めて観測しました。

 先行研究と比較して人口の代表性、データの規模、海馬構造を評価する指標の多様性の点で新規性があり、この研究成果は今後思春期の海馬の可塑性と脆弱性の理解及び将来の大規模な自然災害等への備えに役立つことが期待されます。

発表詳細

大学院総合文化研究科のページからご覧ください。

用語説明

(注1)海馬と海馬亜領域
海馬は大脳辺縁系の一部であり、記憶形成、空間ナビゲーション、感情の調節に関与しています。海馬は歯状回、CA1などの異なる亜領域で構成されており、それぞれが専門的な役割を果たしています。

(注2)海馬の微細構造統合
拡散テンソル画像という脳画像計測手法で得られる水分子の拡散の方向性と一貫性に関する情報を用いて、海馬の微細構造統合という指標を得ることができます。この指標は情報伝達の効率と関連しているとされています。

論文情報

Lin Cai, Norihide Maikusa, Yinghan Zhu, Atsushi Nishida, Shuntaro Ando, Naohiro Okada, Kiyoto Kasai, Yuko Nakamura, Shinsuke Koike*, "Hippocampal Structures Among Japanese Adolescents Before and After the COVID-19 Pandemic," JAMA Network Open: 2024年2月9日, doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.55292.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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