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燃え尽きた星をめぐる無傷の巨大惑星候補の発見研究成果

掲載日:2020年9月17日

発表のポイント:
  • 宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による多色トランジット観測(注1)により、恒星が寿命を迎え、燃え尽きた後に残される「白色矮星」(注2)を周期1.4日で公転する初めての巨大惑星候補を発見した
  • 白色矮星のそばでも惑星が破壊されずに存在している場合があることを実証した
  • この無傷の惑星の発見は、白色矮星周りの生命居住可能惑星の存在可能性にも光を当てる
発表の概要:
 東京大学大学院総合文化研究科附属先進科学研究機構の成田憲保教授、大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の福井暁彦特任助教らの参加する国際研究チームは、2018年4月にNASAが打ち上げたトランジット惑星探索衛星TESS(注3)と、2020年1月に退役したNASAのSpitzer宇宙望遠鏡、そして成田教授と福井特任助教らが開発した多色同時撮像カメラMuSCAT2(注4)などを用いた多色トランジット観測により、白色矮星を公転する初めての巨大惑星候補(※)を発見しました。
 太陽系から約80光年の距離にある白色矮星WD1856+534(以下WD1856:注5)の周りを公転するこの天体WD1856 bは、周期1.4日で公転しており、半径はほぼ木星と同じで、質量は木星の約14倍以下であることがわかりました。白色矮星の周りでは、惑星が破壊された後の残骸と考えられる「微惑星」が公転している例はこれまでにも発見されてきましたが、破壊されていない無傷の巨大惑星候補が発見されたのは初めてとなります。今回の発見は、白色矮星のそばでも系外惑星が破壊されずに存在できることを初めて実証したことになります。
 本研究成果は2020年9月17日、国際科学雑誌「Nature」にオンライン掲載されました。
 
※通常、木星の13倍以下の質量の天体を惑星と呼び、13倍を超える天体は褐色矮星と呼ぶため、褐色矮星の可能性もまだ残されているという意味で、本発表では巨大惑星候補と記載しています。

用語解説
注1:多色トランジット観測
恒星の前を惑星が通過する、いわゆる「食」の現象のことを「トランジット」と言います。これは太陽系外惑星の軌道がたまたま主星の前を通過するような軌道の時に起こります。トランジットをする惑星を「トランジット惑星」と呼びます。そして、トランジットを複数の光の波長帯で観測することを、多色トランジット観測と呼びます。多色トランジット観測は、トランジット惑星の候補が本物の惑星かどうかを判別する方法として知られており、成田憲保教授はJSTさきがけの支援を受けて、多色トランジット観測により太陽系外の地球型惑星の探索を行なっています。
 
注2:白色矮星
太陽の8倍程度より小さな質量を持つ恒星は、中心部での水素の核融合が終わると、水素でできた外層が地球の軌道あたりまで大きく膨らんだ「赤色巨星」という天体になり、最後に外層を外に放出します。白色矮星はその後に中心部に残される天体です。白色矮星はとても高密度な天体で、質量は太陽くらいあるのに対し、大きさは地球くらいしかありません。
白色矮星は、できたばかりの頃は表面温度が10万度にもなる高温の天体ですが、その後は約20億年かけて太陽のような恒星と同じくらいの絶対温度6,000度程度(摂氏5,700度程度)になり、それから約80億年かけて絶対温度が4,000度程度にまでゆっくりと下がります。
白色矮星は地球くらいの大きさしかないため、恒星くらいの表面温度でも放出する光のエネルギーは恒星に比べてとても小さく、白色矮星周りの生命居住可能惑星の公転周期は10時間程度より短くなります。そのため、白色矮星の周りの公転周期10時間程度より内側の軌道に岩石惑星が存在したとすると、その惑星は生命居住可能惑星として数十億年の時間を過ごすことができるのです。

注3:トランジット惑星探索衛星TESS
マサチューセッツ工科大学が中心となって進めているNASAの衛星計画。2018年4月18日に打ち上げられ、2年間でほぼ全天のトランジット惑星を探索するという計画を実施してきました。2年間の観測で2000個以上のトランジット惑星候補を発見しています。現在は延長計画が認められ、3年目の観測が行われています。

注4:MuSCAT2
自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの支援のもと、成田教授と福井特任助教らが開発した多色同時撮像カメラ。スペインのテネリフェ島のテイデ観測所にある口径1.52mのカルロス・サンチェス望遠鏡に設置されています。青い光(400nm-550nm)、赤い光(550nm-700nm)、近赤外線の2つの波長帯の光(700nm-820nm、820nm-920nm)の計4色で天体を同時に観測することができ、TESSで発見されたトランジット惑星候補が本物の惑星かどうかを判別する観測に用いられています。
 
注5:WD1856(WD1856+534)
WD1856は、りゅう座の方向、太陽系から約80光年の距離にある白色矮星で、2つの赤色矮星G 229-20 AとG 229-20 Bとともに3重連星系を成しています。3重連星系としての年齢は正確にはわかっていませんが、WD1856は現在の年齢から逆算して、約60億年前に白色矮星になったと見積もられています。
WD1856は表面温度が摂氏4,400度程度で、質量は太陽の半分程度なのに対し、大きさは地球の1.4倍程度(太陽の80分の1程度)しかありません。白色矮星が発する光のエネルギーはとても小さいため、周期1.4日にあるWD1856 bの表面温度は摂氏マイナス110度程度と、太陽系の木星のような低温になっていると考えられます。

論文情報

Andrew Vanderburg et al., including Akihiko Fukui and Norio Narita, "A Giant Planet Candidate Transiting a White Dwarf ," Nature, doi:10.1038/s41586-020-2713-y.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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