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ガラスは固体と液体の中間状態 -ガラスでは分子の再配置が絶えず起こっている- 研究成果

掲載日:2020年10月16日

 東京大学大学院総合文化研究科の水野 英如助教、池田 昌司准教授、中国・上海交通大学のトン フア(Tong Hua)准教授、フランス・グルノーブル大学のモッサ ステファノ(Mossa  Stefano)教授は、ガラス中の分子の熱運動をコンピュータシミュレーションによって詳細に観察・解析し、通常の固体では起こり得ない、特異な分子運動が生じていることを発見しました。
 固体中の分子は、熱(温度)によって絶えず運動しており、この熱運動が熱容量や熱伝導率といった固体の物性・性質を決めています。つまり、固体の物性を理解するためには、分子の熱運動を理解することが必須なのです。通常、固体中の分子は、ある一つの配置のまわりを“振動”しています。ところが古くから、ガラスには分子の振動運動のみでは説明できない物性があることが指摘されており、したがって、振動以外に何か別の分子運動が存在することが示唆されてきました。
 本研究は、“分子シミュレーション”と呼ばれる、物質を構成する分子一つ一つの運動を模擬するコンピュータシミュレーションを用いて、ガラス中の分子の熱運動を詳細に観察・解析しました。その結果、ガラスでは振動運動に加えて、分子の“再配置”が絶えず起こっていることを発見しました。すなわち、ガラスの分子は一つの配置のまわりを振動するのではなく、配置を時々刻々と変えながら振動することが分かったのです。この分子の再配置運動は、ガラスの液体的な性質を示すものと言えます。
 今回の発見は、ガラス中の分子は“固体的な振動”と“液体的な流動”の中間的な運動を行っていることを明らかにしました。これは、ガラスが固体と液体の中間状態であることを提示するものあり、「ガラスは固体か、液体か」という長年の問いに一つの明確な答えを与えるものです。あるいは安定性の観点からみると、ガラスを“ギリギリ安定な固体”と捉えることもできます。そして、この“限界安定性”は、ガラスが形成される過程に由来するものと考えることができます。ガラスの形成過程にまで遡った理論研究によって、ガラスという物質の状態の基本的な理解が確立されることが期待できます。
 

論文情報

Hideyuki Mizuno*, Hua Tong, Atsushi Ikeda*, Stefano Mossa, "Intermittent rearrangements accompanying thermal fluctuations distinguish glasses from crystals," The Journal of Chemical Physics, doi:10.1063/5.0021228.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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