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金属酸化物クラスター・希土類イオン・ポリマーの協奏による イオン結晶内の水素イオンの高速伝導研究成果

掲載日:2021年4月3日

 近年、化石燃料に依存しない持続可能な社会の構築、深刻化する地球温暖化問題の解決手段の一つとして、水素をエネルギー源とする水素社会への移行が注目を浴びています。なかでも燃料電池は、水素と空気中の酸素との化学反応を利用して電気を取り出すシステムであり、水素利用における最重要技術の一つです。しかし、反応により生成した水素イオンの伝導を担う電解質材料には、性能および環境面で、多くの課題があります。
 東京大学大学院総合文化研究科 内田さやか准教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科 定金正洋教授、英国ニューカッスル大学 John Errington教授らの研究グループは、新たな電解質材料の構成ブロックとして、金属酸化物クラスターに着目しました。ポリオキソメタレートは、高い水素イオン伝導性を示すことが知られているものの、水蒸気や熱への耐性が低いという欠点があります。本研究では、ポリオキソメタレートを希土類イオンと結合させたのち、カリウムイオンとの間に働く静電相互作用によりナノ細孔を有するイオン結晶を構築しました。そのナノ細孔内に、ポリマーと水分子を閉じ込め、水分子が配位数の大きな希土類イオンに結合できることを生かし、高い構造安定性と水素イオン伝導性を両立できることを明らかにしました。得られたイオン結晶は、フッ素や硫黄を含まない環境に優しい固体電解質材料として、燃料電池や水電解などの水素エネルギーシステムへの応用が期待されます。

論文情報

Tsukasa Iwano, Kota Shitamatsu, Naoki Ogiwara, Masanari Okuno, Yuji Kikukawa, Satoru Ikemoto, Sora Shirai, Satoshi Muratsugu, Paul G. Waddell, R. John Errington, Masahiro Sadakane* and Sayaka Uchida*, "Ultra-High Proton Conduction via Extended Hydrogen-Bonding Network in a Preyssler-type Polyoxometalate-Based Framework Functionalized with Lanthanide Ion," ACS Applied Materials & Interfaces: 2021年4月19日, doi:10.1021/acsami.1c01752.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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