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水溶液が分離するか否かを、細胞サイズの器が制御することを発見――人工細胞を用いた医薬品開発や細胞内相分離の原理解明へ貢献――研究成果

掲載日:2022年8月25日

東京大学大学院総合文化研究科
広島大学大学院統合生命科学研究科
科学技術振興機構(JST)

発表者

柳澤 実穂(東京大学大学院総合文化研究科 准教授)
渡邊 千穂(広島大学大学院統合生命科学研究科 助教)

発表のポイント

  • 異種の分子が溶けた水溶液は、試験管中ではよく混ざっていても、小さな人工細胞中では分離し、また細胞サイズが小さいほど分離が進むことを発見しました。
  • 小さな人工細胞でのみ生じる分離は、細胞膜が分子を選り好みする傾向が強まり、より親和性の高い特定の分子を膜に引き寄せることで生じることを明らかにしました。
  • 細胞という小さな空間でみられる相分離の原理解明へ寄与するとともに、人工細胞を利用した医薬品や化粧品の材料開発への貢献が期待されます。

発表概要

 複数の分子が溶けた水溶液は、分子濃度が十分高くなると水と油のように分離します(相分離)。分離する条件は、溶液を入れる器のサイズ(体積)が約1マイクロリットル(1000分の1ミリリットル)以上であれば、サイズに依らないとされてきました。

 東京大学大学院総合文化研究科の柳澤実穂准教授(東京大学 生物普遍性連携研究機構 准教授/大学院理学系研究科 准教授)、広島大学大学院統合生命科学研究科の渡邊千穂助教らは、2種類の高分子が溶けた水溶液を、大きさが変えられる人工細胞(注1)の器に入れることで、試験管中ではよく混ざっていても細胞のように小さな器では分離し、器が小さいほど分離が進むことを発見しました。さらにこの現象を、細胞膜が分子を選り好みする傾向が小さな器の中で強められ、より親和性の高い特定の分子を膜に引き寄せることから説明しました。

 本成果は、近年注目される細胞内相分離(注2)の制御に生体膜や空間サイズが寄与していることを示すとともに、膜やサイズが制御可能な人工細胞を用いる医薬品や化粧品の材料開発への貢献も期待されます。本研究成果は、2022年8月24日(米国太平洋夏時間)に米国科学誌「ACS Materials Letters」のオンライン版に掲載されました。
 



 

 

発表詳細は大学院総合文化研究科のページからご覧ください。
 

研究チーム

柳澤 実穂(東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻/附属先進科学研究機構 准教授)
渡邊 千穂(広島大学大学院統合生命科学研究科 生命環境総合科学プログラム 助教)
古木 智大(東京大学教養学部統合自然科学科 統合生命科学コース 4年(研究当時))
金久 保有希(東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 修士課程)
蟹江 史也(東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 修士課程(研究当時))
小柳 佳介(東京農工大学大学院工学府 物理システム工学専攻 修士課程(研究当時))
竹下 潤(東京大学教養学部前期課程 理科二類 2年(研究当時))

論文情報

Chiho Watanabe, Tomohiro Furuki, Yuki Kanakubo, Fumiya Kanie, Keisuke Koyanagi, Jun Takeshita, Miho Yanagisawa*, "Cell-Sized Confinement Initiates Phase Separation of Polymer Blends and Promotes Fractionation upon Competitive Membrane Wetting," ACS Materials Letters: 2022年8月24日, doi:10.1021/acsmaterialslett.2c00404.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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