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コレステロール合成経路の新たな制御ポイント スクアレンモノオキシゲナーゼが基質により安定化されるメカニズムを解明 研究成果

掲載日:2020年3月10日

コレステロールは高等生物にとって必須の脂質です。しかしながら、コレステロールの生合成には多量のエネルギーが必要であり、また過剰のコレステロールは動脈硬化等の疾患の憎悪因子であるため、その生合成量は厳密に制御されています。よく知られた例としては、コレステロールが自身の合成等に必要なタンパク質群の転写を抑制することが知られています。このような、必要なタンパク質群を「作る速さ」を調節する仕組みは、分子レベルで機序が明らかとなっています。一方、「壊す速さ」を調節する仕組みがあることも近年わかってきていますが、その機序には謎が多く残っています。
今回、東京大学定量生命科学研究所/大学院薬学系研究科の吉岡広大 大学院生、大金賢司 助教、橋本祐一 教授ら、および、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学のAndrew J. Brown教授らの研究チームは、コレステロール合成経路の律速酵素の一つであるスクアレンモノオキシゲナーゼ (SM) がその基質であるスクアレンを感知してSM自身を安定化するという、分解速度の調節を介したコレステロール恒常性維持機構を新たに見出しました。詳細な解析の結果、スクアレンはSMのN末端制御領域に結合することで感知され、タンパク質の分解を担うE3ユビキチンリガーゼとの相互作用が減少し、分解が遅くなることを明らかにしました。このSMの安定化には、基質の蓄積を感知して、それを素早く代謝する意義があると考えられます。また本研究成果は、酵素活性の阻害とは全く異なる、新しい機序のコレステロール恒常性調節薬の開発に役立つことが期待されます。
 
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