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転写の「揺らぎ」から遺伝子発現の空間パターンが生み出される仕組みを解明研究成果

掲載日:2021年3月24日

 遺伝子発現の第一ステップはDNAの情報をRNAへと写し取る転写と呼ばれる反応です。従来、転写は安定的に起こる反応であると信じられてきましたが、近年のイメージング解析技術の発展により、個々の細胞における転写活性は数分おきにON/OFFを繰り返しながら動的に揺らいでいることが相次いで報告されています。こうした転写活性の揺らぎは「転写バースト」と呼ばれ、国際的にも大きな注目を集めています。しかし、実際の個体発生において、転写バーストがどのように制御されているのかという根本的な問いはこれまで未解明でした。
 
 今回、東京大学定量生命科学研究所の深谷 雄志講師は、ゲノム編集技術と独自のライブイメージング技術を組み合わせることで、生きたショウジョウバエ初期胚における転写バーストを直接可視化する実験系を新たに構築しました。詳細な解析の結果、初期胚内の位置によって転写バーストを生み出す連続性が柔軟に変化することで、個体発生における空間的な遺伝子発現パターンが制御されていることを解明しました。また転写バースト制御において、エンハンサーと呼ばれる調節DNAが中心的な役割を果たすことを明らかとしました。エンハンサーの働きに異常が生じると、転写バーストが正しく制御できなくなり遺伝子発現の空間パターンが乱れ、結果として発生不全を引き起こすことも明らかとなりました。以上の成果は、疾患の原因となる遺伝子発現異常メカニズムの解明や治療法の開発につながるものと期待されます。 
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