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piRNA産生における反応場の「ソーシャルディスタンス」 ~自己遺伝子と非自己遺伝子の識別には反応場の適切な区画化が重要~ 研究成果

掲載日:2021年5月11日

piRNA(PIWI-interacting RNA)は、人間を含めた動物の生殖細胞に存在するわずか30塩基程度の小さなRNAですが、次世代に伝わる生殖細胞のゲノムを「トランスポゾン(転移因子)」の脅威から守る役割を持ち、種の存続には不可欠なものです。近年では、ガン細胞や神経細胞などにおいても、piRNAが重要な役割を果たしていることが報告されています。piRNAをつくるために必要な因子の多くは、細胞質の中でも特に核のまわりに見られるnuage(ニュアージュ)と呼ばれる膜を持たない細胞内構造体に局在しているため、この構造体はpiRNAが作られる場、すなわち「piRNA反応場」であると考えられていました。しかし、この構造体の中で何が起きていて、piRNA産生にどう必要であるかといった反応場形成の生物学的意義は不明なままでした。

 今回、東京大学定量生命科学研究所の鍾 沛原大学院生、庄司 佳祐助教、泉 奈津子技術専門職員、泊 幸秀教授の研究チームは、カイコ生殖細胞におけるpiRNA反応場「piP-body」を新たに同定し、piRNAを作る因子がnuageとpiP-bodyに分かれて局在していることを見いだしました。また、piP-bodyとnuageを行き来するpiRNA因子の動きを阻害することで、これらのpiRNA反応場間の行き来が、正確なpiRNAの産生に必須であることを突き止めました。本研究成果は、nuageをはじめ、未だ謎が多く残されている細胞内構造体の生物学的意義を明らかにし、piRNAの品質管理機構の理解を大きく前進させるものです。
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