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酵母菌内でのヒト遺伝子を解析する実験系の開発 ~巨大染色体ベクターの構築~ 研究成果

掲載日:2021年6月9日

 細胞の働きを知るためには、細胞内で起こっている反応を研究する必要があります。通常、細胞からタンパク質(酵素)を取り出し、試験管内でその働きを調べます。しかし、試験管内で全ての酵素がうまく働くとは限りません。また、たくさんの酵素が関わる反応を試験管内で再構築するのは非常に困難な場合もあります。この技術的な「壁」を解決するために、東京大学定量生命科学研究所の小林武彦教授と飯田哲史助教は、単細胞真核生物である出芽酵母を「生きた試験管」のように用いた新しい解析方法「インサッカロ(in saccharo)実験系」を考案しました。これにより、細胞からタンパク質を取り出すことなく、タンパク質の機能を研究することが可能となります。
 このインサッカロ実験系を可能にするには、多くの遺伝子を酵母内で安定に発現させるための「ベクター」が必要です。しかし通常のベクターは1~数個の遺伝子しか保持することができません。そこで今回、酵母の染色体上のリボソームRNA遺伝子領域を利用した「染色体ベクター」を開発しました。リボソームRNA遺伝子は反復構造をとっており、特別な安定性維持機構により、理論的には100個以上のヒト遺伝子の導入が可能となります。本研究により、酵母菌内で、ヒトの細胞の反応系を構築及び解析することができます。さらには再構築したヒトの反応系を用いて薬剤のスクリーニングや遺伝解析を行うことができ、加えて実験にかかるコストや時間、実験動物の数を大幅に削減することも可能になると期待されます。
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