PRESS RELEASES

印刷

PD-1は抗原親和性の低いT細胞を選択的に抑制する研究成果

掲載日:2021年8月26日

 病原体やがん細胞から我々の体を護る免疫システムにおいて司令塔と実行役の両方の役割を担うT細胞は、抗原を認識することによって活性化します。T細胞は個々の細胞が異なる抗原受容体を発現するため、標的とする抗原の種類および抗原への親和性がT細胞ごとに異なります。これまでに抑制性免疫補助受容体PD-1がT細胞の活性化を抑制することは知られていましたが、抗原親和性の違いがPD-1による抑制に与える影響は不明でした。
 今回、東京大学定量生命科学研究所の清水謙次特任助教と岡崎拓教授らの研究グループは、同一の抗原を異なる親和性で認識する複数の抗原受容体および同一の抗原受容体によって異なる親和性で認識される複数の抗原を比較し、抗原親和性の違いがPD-1による抑制効果に与える影響を詳細に調べました。その結果、抗原受容体と抗原の親和性が低い場合ほど、T細胞の活性化により誘導される遺伝子の発現がPD-1によって強く抑制されることを発見しました。また、マウスを用いた解析により、PD-1が働かない場合にはがん抗原に対する親和性が低いT細胞の活性化が相対的に強く促されることを明らかにしました。
 現在、がん治療薬としてPD-1阻害抗体が多くの患者さんに使用されていますが、その効き目はがんの種類や個人によって大きく異なります。本研究成果は、PD-1阻害抗体によるがん免疫療法の改良や新しい免疫制御療法の開発に役立つと期待されます。
 この研究成果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)オンライン版に掲載されました。
 
アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる