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「友達」を記憶する、海馬の神経活動パターン ~なぜ自閉症は友達を記憶しづらいのか?~ 記者発表

掲載日:2022年2月4日

発表者

奥山  輝大(東京大学定量生命科学研究所 行動神経科学研究分野 准教授)
田尾 賢太郎(東京大学定量生命科学研究所 行動神経科学研究分野 助教)
 

発表のポイント

◆成果
友達について記憶は、記憶を司る海馬という脳領域のニューロンが貯蔵していますが、このニューロンがどのように活動するかは分かっていませんでした。今回、友達のことを思い出すとき、海馬のニューロンは「いつも決まった組み合わせのニューロンの集団」が「決まった順番」で活動していることを見つけました
 
◆新規性
さらに、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が壊れたマウス(自閉症マウス)について調べたところ、友達を覚えづらいというヒト自閉症患者の症状が再現されただけでなく、前述した「友達の記憶を表す海馬の神経活動のパターン」が乱れていることがわかりました。
 
◆展望
自閉症スペクトラムは罹患率の高さと経済損失の大きさから、その治療法開発が現代社会の直面する喫緊の課題の一つです。今回の発見は、記憶中枢である海馬が、アルツハイマー型認知症などの記憶の病気だけでなく、自閉症の原因脳領域の一端である可能性」を示唆するものであり、病態理解や新規創薬に大きく貢献できることが期待されます。
 

発表概要

 東京大学定量生命科学研究所の奥山輝大准教授らのグループは、「友達についての記憶」を思い出している時に、記憶を貯蔵する海馬のニューロンがどのように活動をしているのかを、マウスを用いて明らかにしました。起きている時も寝ている時も、友達を思い出す時には、いつも決まった組み合わせのニューロンの集団が、決まった順番で活動していました。さらに友達を覚えづらい自閉症スペクトラムでは、この脳活動のパターンが乱れていることを発見しました。記憶中枢である「海馬」が認知症などの記憶の病気だけでなく、自閉症スペクトラムの原因脳領域の一端である可能性を示唆するものであり、病態理解に大きく貢献できることが期待されます。
 本研究成果は、2022年2月4日に英国科学誌「Molecular Psychiatry」のオンライン版に掲載されました。また、本研究はJST「さきがけ(課題番号:JPMJPR1781)」の支援により実施されました。
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