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令和5年度 東京大学大学院教育学研究科修士課程入学試験筆記試験における出題ミスについて記者発表

掲載日:2022年9月26日

令和5年度 東京大学大学院教育学研究科修士課程入学試験
筆記試験における出題ミスについて
東 京 大 学

 このたび、令和5年度大学院教育学研究科入学試験において、総合教育科学専攻身体教育学コース(修士課程)における筆記試験の専門科目の問題の一部に出題ミスがあることが判明いたしました。出題ミスの内容、発見の経緯及び本学の対応は次のとおりです。
 なお、入学試験の合否判定においては、不利益を被る受験者がないように措置いたしました。



1.    入試実施の概要
○試験実施日
 令和4年9月13日(火):筆記試験[外国語(英語)及び専門科目]
 令和4年9月21日(水):口述試験
○合格発表日
 令和4年9月26日(月)
○受験者数
 総合教育科学専攻身体教育学コース修士課程 8名(うちオンライン受験者1名)

2.    出題ミスの内容
 令和4年9月13日(火)に実施した筆記試験の専門科目 の問題IIの(4)~(6)の問題の説明において、以下の2か所の誤記載(数値の誤り)があった。
  i) (誤) 確率1で大きさ2の報酬が得られ、
     (正) 確率1で大きさ1.5の報酬が得られ、
  ii)(誤) 報酬予測誤差
                         δ(A) = 2 − V(A)
        (正) 報酬予測誤差
       δ(A) = 1.5 − V(A)

  

   (以下、専門科目 該当箇所の抜粋)

下記の問題Iから問題IVに順位(A,B,C,D)をつけて、指定された形式で答えよ。解答順は自由でよいが、例えばA-IIIというように選択順位と問題番号を、解答のはじめに必ず記入すること。配点はAに40点、Bに30点、Cに20点、Dに10点とする。
(略)

 問題II
(略)
 
次に、ある人が、二種類の行動AとBを選び得るとし、Aを選んで実行すると、確率1で大きさ2の報酬が得られ、一方、Bを選んで実行すると、確率1で大きさ1の報酬が得られるとする。その人の脳の中に、行動Aの価値V(A)およびBの価値V(B)というものが、それぞれ保持されるものとする。その人がAとBのどちらを選ぶかは、原則としてV(A) : V(B)の確率に従う、より正確には、以下のルールに従うものとする。
        ・V(A)とV(B)が共に正ならば、確率でA、確率でBを選ぶ
        ・V(A)とV(B)の一方が正、もう一方が0以下の場合には、正の方を100%選ぶ
        ・V(A)とV(B)が共に0以下の場合には、AとBを確率0.5ずつで選ぶ
 
そして、その人がルールに従ってAを選んで実行し、報酬が得られた場合には、V(A)が、報酬予測誤差
        δ(A) = 2 − V(A)
によって、
        V(A) ← V(A) + (A)
と更新される(V(B)はδ(A)によって更新されない)ものとし、一方、その人がルールに従ってBを選んで実行し、報酬が得られた場合には、V(B)が、報酬予測誤差
        δ(B) = 1 − V(B)
によって、
        V(B) ← V(B) + (B)
と更新される(V(A)はδ(B)によって更新されない)ものとする。さらに、上記いずれかの更新が成された後に、V(A)およびV(B)いずれも1%減衰する、すなわち0.99倍になるものとする。V(A)およびV(B)の初期値は、いずれも0.5とする。また、学習率aは0.01であるとする。このとき、以下の問(4)~(6)に答えよ。
 
(4)行動選択を4万1回行った後から、5万回行った後までの、1万回分のV(A)の値(各回において上述の減衰が生じる直前の値)の平均を計算してみると、およそ0.67であった。このとき、同じ1万回分のV(B)の値(各回において上述の減衰が生じる直前の値)の平均は、およそどの位と考えられるか、理由(式を用いた説明)と共に答えよ。
 
(5)上記(4)の後さらに行動選択を続けたところ、行動選択を(最初から数えて)10万回行った後のV(B)の値(上述の減衰が生じる直前の値)は、ほぼ0であった。このとき、V(A)の値(上述の減衰が生じる直前の値)は、およそどの位と考えられるか、理由と共に答えよ。
 
(6)上記(5)の後さらに行動選択を続け、行動選択を(最初から数えて)15万回行ったものとする。このとき、V(A)およびV(B)の値(上述の減衰が生じる直前の値)は、どのようになっていると考えられるか。理由と共に答えよ。

  [解説]
「大きさ1.5」の場合には、数式で表されるシステムが、一旦、ある状態((4)に記した、V(A)の平均がおよそ0.67の状態、これを状態Aと呼ぶことにする)にしばらく留まり、その後に、別の状態(状態Bと呼ぶことにする)に遷移して、それ以降はそこに留まるという挙動を示し、(4)では、状態A(におけるV(B)の平均)について問い、(5)では、状態Bについて問い、(6)では、状態Bから、さらに他の状態へは遷移しないことを問う、というのが元々の出題意図であった。それに対して、「大きさ2」の場合には、一旦ある状態にしばらく留まってから別の状態に遷移する、という振る舞いが、(4)~(6)に記載した時間スケールでは、殆ど全く起こらなくなってしまい、すぐに((4)で問うているタイミングよりも前に)最終的な状態に遷移して、そこから動かなくなってしまうため、上記の元々の出題意図が果たせなくなってしまった。さらに、(4)で問うているタイミングのV(A)の平均は(4)の問題文に記した「およそ0.67」ではなくなってしまうため、この「およそ0.67」という記述は妥当ではないものとなってしまっていた。


3.出題ミスの発見の経緯
 試験終了後の採点時(9月14日)に、出題者が発見した。

4.出題ミスへの対応
 出題ミスのあった問題IIについては、受験者全員が配点の順位付けで「D」を選択しているため、当該問題は全ての受験者の配点が10点となる。このうち、出題ミスの影響があった(4)~(6)について、受験者全員を正答とすることとした。この措置による順位の変動はなく、不利益を生じる受験者はいないと判断した。なお、本日、教育学研究科Webサイトで出題ミスの発生及び出題ミスの内容や対応を公表した。

5.出題ミスが発生した原因
 作問の段階での各コース内での点検確認、その後の入試関係委員会(各専攻又はコースから選出)での点検確認(2回)を行っている。また、入試当日は、コース主任や作問に関わらない教員を含めた複数教員による点検確認を行っている。今回の出題ミスがあったような専門性の高い問題の場合、専門分野が離れている教員では確認の範囲が文脈や誤字脱字のチェックに限られるため、数値の設定の誤りを見逃すこととなった。

6.再発防止対策等
 専門性の高い分野においては、入試関係委員会等での点検確認では限界がある。そのような専門性の高い問題を出題するコースについては、コースでの作問の段階で出題者が出題の意図や正解を専門分野が近い教員に詳しく説明したうえで、誤りがないかを丹念に確認するといった手順を行い、さらに試験当日までにコース主任あるいはコース内の作問者以外の教員が試答をするという手順を行うことを必須とする。
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