平成31年度 東京大学大学院理学系研究科修士課程入学試験 専門科目における出題ミスについて記者発表

掲載日:2018年9月11日
平成31年度 東京大学大学院理学系研究科修士課程入学試験
専門科目における出題ミスについて
平成30年9月11日
東 京 大 学
東 京 大 学
このたび、平成31年度大学院理学系研究科入学試験において、生物科学専攻修士課程における専門科目の試験問題の一部に出題ミスがあることが判明いたしました。出題ミスの内容、発見の経緯及び本学の対応は次のとおりです。
なお、入学試験合否判定においては、不利益を被る受験者がないように措置いたしました。
1.入試実施の概要
試験実施日 平成30年8月21日(火)
合格発表日 平成30年9月11日(火)
受験者数 生物科学専攻修士課程 118名(2名)
※ カッコ内の数字は、受験者のうち出題ミスのあった問題を選択した受験者数で内数。
2.出題ミスの内容
平成30年8月21日(火)に実施した理学系研究科入学試験(修士課程)における筆記試験での、専門科目 第10問(人類学分野の問題)で出題した[選択問題V]問13~15に次のような誤りがあった。
[選択問題V]
問13.
(誤)変異型雌を含まないグループにおいて、雌の適応度はw = 2xと書けることを示せ。
(正)変異型雌を含まないグループにおいて、雌の適応度はw = 2kxと書けることを示せ。
問14.
(誤)(前略)ただし、グループ数が多いことを仮定し、野生型雌の適応度はw = 2xとみなせるものとする。
(正)(前略)ただし、グループ数が多いことを仮定し、野生型雌の適応度はw = 2kxとみなせるものとする。
これらの問題において、変異型雌の適応度は次のように書ける。

ここで、右辺に係数kがあるため、問13の質問文では、「(前略)雌の適応度はw = 2xと書けることを示せ。」ではなく、「(前略)雌の適応度はw = 2kxと書けることを示せ。」と係数kを入れる必要があった。このミスのため、正答を導けない不適切な設問となった。
問14は、問13の結果を受けて、ただし書きとして、「野生型雌の適応度はw = 2xとみなせるものとする。」とあるが、ここでも、「野生型雌の適応度はw = 2kxとみなせるものとする。」と係数kを入れる必要があった。このミスのため、正答を導けない不適切な設問となった。
問15では、「問14の結果にもとづいて、この理由を考察せよ。」とあるが、問14が不適切な設問となったため、問15も不適切な設問となった。
3.出題ミスの発見の経緯
当該問題の出題者と採点者が答案の採点中(8月22日11時頃)に、設問が不適切である可能性に気づき、出題者、採点者に加えて専攻入試実施委員会正副委員長、専攻長とで内容を検討した結果、出題ミスであると判断した。
4.出題ミスへの対応
当該問題[選択問題V]問13~15について、全て正答として採点を行った。なお、全ての受験者の合否に影響はなかったことを確認した。
なお、生物科学専攻受験者全員に対して、出題ミスの内容と対応について記述した通知文を9月11日(火)に速達で郵送した。
5.出題ミスが発生した原因
当該出題ミスについては、同じ研究分野の複数の教員による問題作成の初期段階では[選択問題V]にkは入っていなかったが、その後の段階で「受験者の理解を容易にする」との理由から[選択問題V]の数式にkを入れることとなった。しかし、その際、問13~14の問題文にkを入れることを失念した。その後、異なる研究分野の多数の教員と専攻入試実施委員が加わって複数回検討を行ったが、結果的にミスを見落とした。
6.再発防止対策等
今後、入学試験問題の作成に当たってはこのようなことがないよう、今回のミスの発生した経緯(どのような出題ミスだったのか、その発生原因は何か等)を出題担当教員に十分に説明するとともに、チェック体制の見直しを図り再発防止に努める。
〔当該問題〕
<文2>
次に、雌が複数のグループに分かれて繁殖する場合を考える。このとき、どれか1つのグループに、上記と同様の変異型雌が1個体だけ含まれるとする。子世代の交尾がグループ内でのみ起こるとすると、変異型雌の適応度は次のように書ける。

ただし、nは変異型雌を含むグループ中の雌の個体数を表す。
問13. 変異型雌を含まないグループにおいて、雌の適応度はw = 2xと書けることを示せ。
問14. すべてのxmに対してwm ≤ w(等号成立はxm = xのとき)であるようなxを求めよ。ただし、グループ数が多いことを仮定し、野生型雌の適応度はw = 2xとみなせるものとする。
問15. イチジクコバチ(Blasophaga psenes)などの寄生蜂では、性比が著しく雌に偏る例が知られている。問14の結果にもとづいて、この理由を考察せよ。