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ディラック状態を固体と固体との「界面」でも検出 トポロジカル絶縁体を用いた低消費電力素子への応用に期待

掲載日:2014年3月3日

トポロジカル絶縁体は、内部は電流を流さない絶縁状態であるのに対し、その表面は特殊な金属状態が現れる物質です。表面の金属状態は、グラフェンなどでも知られるディラック状態(固体中であたかも質量を持たない電子のように振る舞う現象を指す)で、エネルギーをほとんど消費しない電子伝導が可能なため、低消費電力素子への応用に向け研究が活発化しています。

(c) R. Yoshimi, A. Tsukazaki, K. Kikutake, J. G. Chckelsky, K. S. Takahashi, M. Kawasaki, Y. Tokura. トポロジカル絶縁体と、真空との境界である「表面」や半導体のような固体との「界面」にはディラック状態と呼ばれる特殊な金属状態(図中赤枠)が現れる。電子(図中緑球)の界面でのトンネル電流を測定することで、ディラック状態を検出した。

© R. Yoshimi, A. Tsukazaki, K. Kikutake, J. G. Chckelsky, K. S. Takahashi, M. Kawasaki, Y. Tokura.
トポロジカル絶縁体と、真空との境界である「表面」や半導体のような固体との「界面」にはディラック状態と呼ばれる特殊な金属状態(図中赤枠)が現れる。電子(図中緑球)の界面でのトンネル電流を測定することで、ディラック状態を検出した。

今回、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の吉見龍太郎博士課程大学院生と十倉好紀教授らのグループは、近年見いだされた新物質のトポロジカル絶縁体((Bi 1-x Sbx)2Te3、Bi:ビスマス、Sb:アンチモン、Te:テルル)と既存の半導体材料(InP、In:インジウム、P:リン)を接合した素子を用いて、界面を通したトンネル伝導測定(電子のような小さな粒子が波動的な性質によってエネルギー障壁を通り抜ける際に生じる電流を測定し、電流の流れやすさを確認する方法)を行うことで、トポロジカル絶縁体に特徴的な「ディラック状態」を固体と固体との「界面」で検出することに初めて成功しました。さらに、トポロジカル絶縁体の試料組成比を制御することで、界面のディラック状態を自在に制御できることを示しました。

本研究では、実際に固体素子へ適用する上で必要となる固体と固体との「界面」でもディラック状態が保持されていることを実証しました。これは、既存の半導体技術とトポロジカル絶縁体のディラック状態を融合した新しい素子開発の可能性を示した結果であり、低消費電力素子の実現へ大きく前進した成果です。

本研究は、最先端研究開発支援プログラム(FIRST)課題名「強相関量子科学」(中心研究者:十倉好紀)の事業の一環として行われました。

プレスリリース

論文情報

R. Yoshimi, A. Tsukazaki, K. Kikutake, J. G. Checkelsky, K. S. Takahashi, M. Kawasaki, Y. Tokura,
“Dirac electron states formed at the heterointerface between a topological insulator and a conventional semiconductor”,
Nature Materials, Online Edition: 2014/2/20, Japan Time:19:00, doi: 10.1038/NMAT3885.
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