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新しい氷「0(ゼロ)型の氷」の発見 水の不思議な結晶化挙動への新しい説明

掲載日:2014年6月26日

大気圧下で存在する氷の種類はただ一つだけなのでしょうか?私たちが身の回りで目にする氷はI(イチ)型の氷と呼ばれ、雪や氷河もすべてこの氷でできています。これまでは、水から氷の結晶が生まれる際にはこのI型の氷の核が水の中に直接形成され、それがそのまま大きくなると信じられてきました。

0型の氷の核。酸素原子は青、水素原子は黄色で表されている。

© 2014 John Russo, Flavio Romano, Hajime Tanaka.
0型の氷の核。酸素原子は青、水素原子は黄色で表されている。

このたび東京大学生産技術研究所の田中肇教授、John Russo特任助教らの研究グループは、この常識に反し、これまで知られていなかった液体の水に近い構造を持った新しい氷がまず形成され、それが成長する過程でI型の構造に変わっていくことを、分子動力学シミュレーションにより発見し、この氷を「0(ゼロ)型の氷」と命名しました。これまで、水がどうして-40℃付近まで冷却(過冷却)されても結晶化することなく、液体のまま存在できるかは大きな謎でした。例えば、高層大気の雲の水滴の結晶化はこのような低温になってはじめて起きていることが知られています。今回、この不思議な現象が、過冷却水の構造がI型の氷の結晶のそれと大きく異なっており、そのためI型の氷への直接結晶化が阻害されること、そして、結晶化はI型の氷より融点の低い、液体の構造と相性の良い0型の氷の形成から始まることで説明できることが明らかとなりました。

水の結晶化は自然界では、大気や生体内のシステムなどにおいて、産業界では航空、食品、エネルギー産業の分野において重要なプロセスです。例えば、巻雲内で作られる氷の結晶は、地球が太陽から受け取るエネルギー(放射収支)や気候に大きな影響を与えます。今回の発見は、地球上で最も重要かつ人類にとって最も身近な相転移の一つである水の結晶化という現象について私たちの知識を根底から変える可能性があります。

論文情報

John Russo, Flavio Romano, and Hajime Tanaka,
“New metastable form of ice and its role in the homogeneous crystallization of water”,
Nature Materials Vol. 13, No. 7, (2014), pp. 733 – 739, doi: 10.1038/nmat3977.
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生産技術研究所 基礎系部門 田中研究室

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