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白い根を緑に 根で葉緑体の分化を調節する仕組みを解明

掲載日:2012年3月15日

八百屋に並ぶ大根の根(白い部分)は、光が当たっていても葉のように緑色にはなりません。多くの植物では、根は光合成を行なわない器官(非光合成器官)として機能し、光合成を行なう葉緑体の発達が起こらないからです。しかし、その抑制がどのような仕組みで行われているかはこれまで全く分かっていませんでした。

green roots

葉緑体の分化を誘導し、緑化した根
葉緑体分化に関わる転写因子GLKを過剰に作らせた根(GLK1ox及びGLK2ox)では、葉緑体の分化が誘導され、顕著に緑化した。下図の赤色の点は、葉緑体に蓄積したクロロフィルの蛍光を示しており、緑化の度合いを表している。

東京大学大学院総合文化研究科の小林康一助教(前・独立行政法人理化学研究所植物科学研究センター基礎科学特別研究員)、増田建准教授を中心とした国際共同研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナを材料に、根の細胞で葉緑体の分化を抑制している仕組みを初めて明らかにしました。

シロイヌナズナの根は通常、エネルギー源を地上部の葉に依存しており、細胞における葉緑体の分化は抑制されています。しかし、地上部を失うと、光により葉緑体の分化が誘導され、緑化することが分かりました。この調節には植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンが深く関与しており、植物の発達や環境に応じて葉緑体の分化をコントロールしていることが初めて明らかとなりました。さらに、この調節機構を応用することで、白色の根の細胞においても葉緑体の分化を誘導し、緑色の光合成を行なえる器官に変換することに成功しました。

この発見は、将来、非光合成器官を光合成器官に機能転換させることで、植物の生産性を革新的に効率化させる技術に繋がることが期待されます。

プレスリリース

論文情報

Koichi Kobayashi, Shinsuke Baba, Takeshi Obayashi, Mayuko Sato, Kiminori Toyooka, Mika Keranen, Eva-Mari Aro, Hidehiro Fukaki, Hiroyuki Ohta, Keiko Sugimoto, and Tatsuru Masuda,
“Regulation of Root Greening by Light and Auxin/Cytokinin Signaling in Arabidopsis”,
The Plant Cell (オンライン版:3月14日掲載)
論文へのリンク

リンク

大学院総合文化研究科

Tatsuru Masuda Laboratory

和田・小林研究室

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