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分子はどのようにして結晶になるのか 一分子一分子が積み重なって結晶に成長する原理を初めて解明

掲載日:2012年9月21日

東京大学大学院理学系研究科化学専攻の中村栄一教授らの研究グループは、巧みに設計した有機分子一分子を物質の表面に化学結合させて、この物質をこのタネにして有機物を結晶させることによって、タネ分子の上に分子一つ一つが積み重なり、大きな結晶へと成長していく原理を解明した。この新原理は、日常生活でよく見られる結晶成長の関する素朴な疑問に答えるだけでなく、有機太陽電池の高性能化や医薬品の薬効向上につながると期待される。

ナノカーボン表面につけたタネ分子の上に数個の分子からなる集合体がたくさん形成し、その一部が大きな結晶へと成長する © Eiichi Nakamura

ナノテクノロジーの技術を応用し、カーボンナノホーンとよばれる微細炭素粒子の表面に有機分子一分子(タネ分子)を結合させた新材料を作製した。この材料を加えて有機分子の結晶を作製し「単分子実時間電子顕微鏡イメージング」とよばれる手法で結晶の生成を観察したところ、固体の上に付けたタネ分子の上に数個の分子からなる集合体がたくさん形成し、その中のごく一部のみが結晶へと成長するという確率過程であることが初めて実験的に証明された。各成分の構造を決定し数を数えることにより、タネ分子が大きな結晶に成長する確率を見つもることにも成功した。

有機分子の結晶化は、日常生活から生体、工業プロセスまで遍く起きている現象であるにもかかわらず、表面における有機分子の結晶化メカニズムは未解明な点が多かった。従来の説では、結晶の形や性質を決定づける上で物質の表面の周期性が大きく影響すると考えられてきたが、今回の成果により、実際には物質表面についた分子の形と性質が決定要因であることが初めて示された。タネ分子のデザインを工夫すれば、同じ分子からでも違う性質を持った結晶を作り分けることができ、物質の性質を様々に変えることが可能となる。

論文情報

Koji Harano, Tatsuya Homma, Yoshiko Niimi, Masanori Koshino, Kazu Suenaga, Ludwik Leibler, iichi Nakamura,
“Heterogeneous nucleation of organic crystals mediated by single-molecule templates”,
Nature Materials: 2012/8 (Japan time), doi: 10.1038/NMAT3408.
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